星のお姫さま

祝!1位の風来坊兄ちゃんの「わたしのこと、まだ、好きですか?」の私による1位以下バージョンを、送信します。

やっと放課後になった。
これで辛い教室から抜け出せる。
もともと、私は「かわいい」と女子に妬まれて、「かわいい」と男子に変な目で見られるだけの監獄のような空間は、嫌だった。
私は、吹奏楽部の打楽器パートらしい。
なぜか一番上の三階にある音楽室に私は向かった。
私は、事故で記憶喪失になり、ショックでADHD(発達障害)もあるらしい。
大丈夫かな。楽譜の読み方とリズムの打ち方は、先週、覚えた。部員の名前も、少し覚えた。
楽器の正式名称は、打楽器は、とりあえずコンプリートした。
私は、そう考えながら、音楽室の扉を、そっと開けた。鍵は、かかっていなかった。
音楽室に入ると、なんだか、部員たちは、シンプルな音階を上がる練習をしていた。
チューバの先輩の赤い髪に染めた不良の土田太一さんに話しかけられた。
「俺、見たんだけどさ、風間って、お前のかわいい顔を殴りつけたんだよ!許せないよな!俺が助けたんだよ!」
なぜだろう。ガラスの欠片が胸に突き刺さるような感覚がした。
きっと、私が、かわいい顔だから、殴りたかったんだね
私も、こんな弱点でしかない外見、嫌いだよ
私は完全に納得した。
風間くんのところへ、だれとも、いつも話さない私は、相当な勇気を持って、歩いて行った。
風間くんは、トランペット(金管楽器)を大事そうにケアしていた。
王子だ。
直感的に、私は、そう思った。
「風間くんは、無駄に、かわいい私が嫌いなの?」
風間くんは、びっくりしていた。
「嫌いじゃないよ。だれかのウワサ?」
「ウワサっていうか、土田さんが、言ってた」
私が説明すると、風間くんは、冷たい目で、土田さんを見て、「あいつ、終わってるな」と、つぶやいた後に言った。
「じゃあ、それは、あいつだけが叫んでいる気持ち悪い妄想だから」
えっ。
いつも、部員に優しい風間くんが、怒っている。
なんだか、カッコイイ。
「あ、そうなんだ」
じゃあ、私の最弱な外見は、悪くないの?
甘い考えが頭に浮かんだけれど、私は処分した。
それは、ない。なさすぎる。
それは「自由曲」すぎる。

私の課題曲は「美少女の自分を壊せ!」だ。

パート練習の時間が、始まり、同じパートの、友香ちゃんが、話しかけてきた。友香ちゃんは、茶髪で少し派手だけど、クソ真面目の私なはずなのに、なぜか怖いと思わない。

「7月下旬のコンクール、成功させような!」

友香ちゃんは話し方が、男子っぽい

「どうかな。ランキングみたいな金賞に、良くない予感がする」

私は、冷静に、そう伝えた。

友香ちゃんは、めげずに、ちょっと、ふざけたような感じで言った。
「またまたー!普通に金賞を目指そうよ!他校の演奏を聴くのも楽しいよ!」

「そうかもしれない」

私は、あいまいに返事をした。

「とにかく、7月下旬の夏のコンクールは、参加しろよな!星川ちゃん!」

「がんばるよ」

私は、そう答えた。
適当に、がんばろう。
私は、透明感のある甘いグロッケンシュピール(鉄琴とは違います。鍵盤の打楽器)の音を想像した。
あの傷付いたガラスのような音は、壊れそうだけど、絶対に、壊れない。

私は、そう確信した。

「じゃ、これ、課題曲だから」

友香ちゃんから、渡された楽譜は、樽屋雅徳(たるやまさのり)さんの「星の王子さま」だった。

サン・テグジュペリさんの高校の現代文の教科書の「星の王子さま」は、読んだ。

だいたい、意味は分かる。

友香ちゃんは、急に、真剣な顔で、私に伝えた。
「星川ちゃんは、星のお姫さまなんだよ。だから、自分を壊したら、ダメなんだよ」

「そんなわけないよ」

私の気持ち悪いほど整った外見は、要らない。要らなさすぎる。

「今日、風間っちと話せて、うれしかったよな?」

友香ちゃんが、明るく、訊ねる。

「なっ、何言ってるの?それは、ないよ.....。いいわけないよ」

私が、表情を見られないように、うつむいていると、なぜか「応援するぜ!」と友香ちゃんのテンションが上がった。
やめろ。そこでクレッシェンド(だんだん大きく)をするな。

私は、風間くんがトランペットを完璧に演奏している姿を思い出した。

ため息をついた。

本当に、風間くんは、甘すぎる王子だ。