早口でそれだけを捲し立て、真っ赤な顔のまま教室を飛び出した咲夏は、廊下をものすごいスピードで駆け抜けていた。
(心臓止まるかと思った……! 絶対に聞かれてないよね!? 大丈夫だよね!?)
頭の中で恥ずかしすぎるやり取りをリフレインさせながら、階段を駆け下りて一階の自販機コーナーへと滑り込む。だが、勢いよく自販機の前にたどり着いた咲夏は、そこに先客がいることに気づいて急ブレーキをかけた。
ポケットに手を突っ込み、気だるげにボタンを押そうとしていたのは、佐藤怜だった。
怜は、肩を上下させて激しく動揺している咲夏の姿を認めると、怪訝そうに眉をひそめた。
「あ? お前、なんでそんな急いでんだ?」
「ぜぇー、はぁ……っ、ゼェ、ゼェ……」
咲夏は膝に手を突き、消え入りそうな声で必死に息を整える。
「怜くん……っ。ちょっと、いろいろあってね……! 走ってきたの……っ」
その必死すぎる様子に、怜はあきれたように口元を緩め、ふっと小さく吹き出した。
「はは、バカなやつ。自販機は逃げねぇつーの」
そう言って笑う怜の顔を、咲夏は呼吸が整うのも忘れて、どこか新鮮な気持ちで見つめていた。
以前、那智から聞いていた頃の怜は、いつも一匹狼で、どこか冷めていて、こんな風に分かりやすく笑うようなタイプではなかったはずだ。
けれど、高校に入って那智も笑顔を取り戻し、自分たちという新しい居場所ができてから、怜がこうして笑う回数は確実に増えていた。
(なんか、怜くん変わったなぁ……)
そんな感慨に浸っていると、怜は買い終えた缶の炭酸飲料を指に引っ掛け、じゃあな、とばかりに背を向けて歩き出そうとした。
「あっ、ちょっと待って!」
咲夏は慌てて一歩踏み出し、去ろうとする怜の制服の腕をぎゅっと引っ張った。
「うおっ、何だよ急に……」
驚いた怜が、目を丸くして振り返る。
咲夏は、じっと怜の顔を見つめた。
今、教室に戻れば、まだニヤニヤしている知華と那智、そして何も知らない冬弥が待っている。
あの空間にこの赤くなった顔のまま戻るのは、さすがにハードルが高すぎた。
それに――目の前にいるのは、冬弥の大親友である、佐藤怜だ。
「あのね、怜くん。……ちょっと、ジュース付き合ってくれない?」
咲夏は手早く自販機で自分の分のジュースを購入すると、怜を促して、冬の冷たい空気の満ちる中庭へと向かった。
常緑樹の葉がさらさらと擦れ合う静かな中庭。
その片隅にある木製のベンチに、二人は少し距離を空けて腰を下ろす。
「で?何だよ話って。改まって」
怜がプルトップを引き抜き、炭酸のコーラが弾ける爽快な音を響かせる。
咲夏は、手の中の温かい缶ココアをじっと見つめ、小さく息を吸い込んだ。
冬休みイベントのクリスマスはもう暫くしたら迫ってくる。
冬弥のことが大好きだからこそ、喜ばせたいし、失敗したくない。
けれど、男の子の本当の気持ちなんて、経験のない自分にもさっぱり分からなかった。
「あのね、怜くん。冬弥くんのことなんだけど……。ちょっと、相談に乗ってほしいことがあって」
咲夏は意を決して、冬弥の大親友である怜に向かって、ずっと胸に秘めていた思いを切り出すことにしたのだった。
(心臓止まるかと思った……! 絶対に聞かれてないよね!? 大丈夫だよね!?)
頭の中で恥ずかしすぎるやり取りをリフレインさせながら、階段を駆け下りて一階の自販機コーナーへと滑り込む。だが、勢いよく自販機の前にたどり着いた咲夏は、そこに先客がいることに気づいて急ブレーキをかけた。
ポケットに手を突っ込み、気だるげにボタンを押そうとしていたのは、佐藤怜だった。
怜は、肩を上下させて激しく動揺している咲夏の姿を認めると、怪訝そうに眉をひそめた。
「あ? お前、なんでそんな急いでんだ?」
「ぜぇー、はぁ……っ、ゼェ、ゼェ……」
咲夏は膝に手を突き、消え入りそうな声で必死に息を整える。
「怜くん……っ。ちょっと、いろいろあってね……! 走ってきたの……っ」
その必死すぎる様子に、怜はあきれたように口元を緩め、ふっと小さく吹き出した。
「はは、バカなやつ。自販機は逃げねぇつーの」
そう言って笑う怜の顔を、咲夏は呼吸が整うのも忘れて、どこか新鮮な気持ちで見つめていた。
以前、那智から聞いていた頃の怜は、いつも一匹狼で、どこか冷めていて、こんな風に分かりやすく笑うようなタイプではなかったはずだ。
けれど、高校に入って那智も笑顔を取り戻し、自分たちという新しい居場所ができてから、怜がこうして笑う回数は確実に増えていた。
(なんか、怜くん変わったなぁ……)
そんな感慨に浸っていると、怜は買い終えた缶の炭酸飲料を指に引っ掛け、じゃあな、とばかりに背を向けて歩き出そうとした。
「あっ、ちょっと待って!」
咲夏は慌てて一歩踏み出し、去ろうとする怜の制服の腕をぎゅっと引っ張った。
「うおっ、何だよ急に……」
驚いた怜が、目を丸くして振り返る。
咲夏は、じっと怜の顔を見つめた。
今、教室に戻れば、まだニヤニヤしている知華と那智、そして何も知らない冬弥が待っている。
あの空間にこの赤くなった顔のまま戻るのは、さすがにハードルが高すぎた。
それに――目の前にいるのは、冬弥の大親友である、佐藤怜だ。
「あのね、怜くん。……ちょっと、ジュース付き合ってくれない?」
咲夏は手早く自販機で自分の分のジュースを購入すると、怜を促して、冬の冷たい空気の満ちる中庭へと向かった。
常緑樹の葉がさらさらと擦れ合う静かな中庭。
その片隅にある木製のベンチに、二人は少し距離を空けて腰を下ろす。
「で?何だよ話って。改まって」
怜がプルトップを引き抜き、炭酸のコーラが弾ける爽快な音を響かせる。
咲夏は、手の中の温かい缶ココアをじっと見つめ、小さく息を吸い込んだ。
冬休みイベントのクリスマスはもう暫くしたら迫ってくる。
冬弥のことが大好きだからこそ、喜ばせたいし、失敗したくない。
けれど、男の子の本当の気持ちなんて、経験のない自分にもさっぱり分からなかった。
「あのね、怜くん。冬弥くんのことなんだけど……。ちょっと、相談に乗ってほしいことがあって」
咲夏は意を決して、冬弥の大親友である怜に向かって、ずっと胸に秘めていた思いを切り出すことにしたのだった。



