夏と冬が重なれば。番外編


グイッ、と乱暴に腕を引かれ、私は完全にバランスを崩した。

足がもつれ、身体が後ろに傾く。視界がぐにゃりと歪み、周囲の光景がゆっくりとしたスローモーションに切り替わっていった。

(あぁ……また私は、同じことを繰り返すのか)

脳裏に、あの日の中学校の教室がリフレインする。割れる窓ガラス、床に滴る赤い血、職員室で頭を下げる母親の姿。
何が正義だ。何が法律だ。結局のところ、私はまた母親に頭を下げさせ、迷惑をかける最低な奴じゃないか。いくら外見をギャルに変えて鎧をまとったところで、中身はあの頃と何も変わっていない。

それに――怜が言っていた「お前を理解してくれる奴」なんて、やっぱりただの綺麗事だ。
現に今、私みたいな派手な見た目の奴を、信じて庇ってくれるような人間なんて、この世界のどこにもいやしない。

ドサッ、と冷たいアスファルトの床に尻もちをついた。
「……っ!」
お尻から背中にかけて、鈍い痛みが走る。その痛みが引き金になり、あの日の腕の怪我の疼きが、鮮烈に脳裏に蘇った。

言いようのない悔しさと、理不尽さへの怒り。言葉にならないドス黒い思いが、胸の奥から一気に爆発しそうになった、その時だった。

「何してるんですかっ! その子、万引きなんてしてませんよ!」

凛とした、どこか鈴の鳴るような通る声が、私の頭上からまっすぐに降ってきた。

店員の動きがピタリと止まる。私も痛む身体を起こしながら、驚いて声のした方を見上げた。

そこに立っていたのは、私の予想を遥かに超える人物だった。