夏と冬が重なれば。番外編


ザク、ザク、と重い音を立てて、床に金色の長い髪が落ちていく。
鏡の中に映る私は、すっかり髪が短くなり、どこか幼い頃の面影を取り戻していた。

今までの事情を話し、レディースを抜ける。
そう仲間に伝えた時、私はそれなりの報復を覚悟していた。裏切り者として殴られるか、あるいは焼きを入れられるか。
だが、総長の菜々緒さんは、タバコの煙を夜空に吐き出したあと、私の短い髪をじっと見つめて、ただ一言だけ言った。

「母親、大事にしろよ」
「え……」
「お前にここは、最初から似合わねぇと私は思ってたよ」

菜々緒さんは不器用な手つきで私の頭を一度だけ手荒に撫でると、私の胸の真ん中に、コツンと拳を押し付けてきた。
「じゃぁ…元気でな、那智」

それだけだった。怒号も暴力も、引き止めすらもなかった。
なんだか急に鼻の奥がツンとして、涙が出そうになった。私は慌てて顔を背け、「あーあ、せっかくの髪が台無し」なんて憎まれ口を叩いて誤魔化す。
夜の闇へ消えていく仲間のバイクたちの爆音を、私は一人で見送った。

あっさりと、不良の仲間たちとの繋がりは絶たれた。
一人きりになった夜の道で、ポカンと心に大きな穴が空いたような、妙な寂しさが押し寄せる。けれど、私の足はもう震えていなかった。
母親と、弟の逞。あの大切な三人暮らしを取り戻すため、私は変わる。変わってみせる。