夏と冬が重なれば。番外編


それから、半年が経ったある日。

「…ただいま」

夜風の匂いをまとったまま、深夜の静まり返った玄関のドアを開ける。
いつもなら、休みの土日はリビングの明かりの向こうから、逞がゲームをする音や、母さんが書類をめくる音がかすかに聞こえるはずだった。
だが、家の中は不自然なほど真っ暗で、冷え切っていた。

違和感に胸を突かれ、廊下を急ぐ。
リビングの電気をつけた瞬間、私の心臓が跳ね上がった。

「――っ、母さん!?」

キッチンとリビングの境目に、母さんが崩れ落ちるように倒れていた。
書類が床に散らばり、いつも綺麗にまとめられている髪が、力なく床に広がっている。

「おい、母さんっ!!母さんーーっ!!」

駆け寄り、その肩を激しく揺さぶる。
触れた肌は、驚くほど熱かった。

     

病院の廊下は、消毒液の匂いと、機械的な静寂に満ちていた。
処置室の前で、私はただ自分の拳を凝視していた。レディースの仲間とバイクで走り回り、誰かを威嚇するために使っていたこの手が、今は情けないほど震えている。

しばらくして、出てきた医師に呼ばれ、私は小さな診察室に入った。

「……過労です。深刻な睡眠不足と脱水、それに極度のストレスが重なった結果、身体が限界を迎えて倒れられたのでしょう」

医師の淡々とした説明を聞きながら、私は心底、自分が何をしているのか分からなくなっていた。

そして、その後に続く言葉が、私の心臓を容赦なく抉った。