「この度は、うちの娘が大変なご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした……!」
職員室の中、いつもは法廷で凛と胸を張っているはずの母・伊都が、深く、何度も頭を下げていた。
相手の親と担任の教師に向かって、必死に謝罪の言葉を繰り返している。
その姿を見た瞬間、私の中でドス黒い感情が爆発した。
「は?なんで……?なんでお母さんが謝ってんだよ!?」
私は母の服を引っ張り、担任の胸ぐらに掴みかからんばかりの勢いで怒鳴り散らした。
「おかしいだろ!なんで私が悪いことになってんだよ! いじめを見て見ぬふりして、先に手を出してきたのはアイツらだろーがっ!私は間違ったことはしてねぇ!!」
――パチンッ!!
乾いた音が職員室に響いた。
私の顔が真横を向く。頬が、カッと熱くなった。
見上げると、母が悔しさと悲しさに満ちた表情で、右手を震わせながら私を睨みつけていた。
「那智……いい加減にしなさい」
その一言で、私の中の何かが完全に壊れた。
味方だと思っていた母親にまで否定された。
正しさを貫いた結果がこれなら、もう全部、どうだっていい。
「じゃあ、母さんの言う法で守れない奴への正義ってなんだよ…」
勢いよく職員室を出ていった、私の呟きは廊下にむなしく響いた。



