夏と冬が重なれば。番外編

すると、目の前の女の子は何やらピンと来たように、さらに可愛らしいお目をキラキラと輝かせた。

「もしかして、その小説って……ギャル令嬢が出てくる、”レオンハート・ラバー”って小説!?」

(――ってえええええええええええ!!! この子、こんなに完璧な今どきギャルなのに、まさかの隠れ同志(オタク)だったのーーーっ!? キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)

神展開の到来に、私の脳内掲示板は大祭り状態だ。
あまりの衝撃と嬉しさに、ギャルの仮面がガラガラと崩れ落ちる。

「えええ!! 知ってるの!? あのレオン様知ってるの!? ~~っ、あ、えーと」

限界オタク特有の早口で食い気味に叫んでしまい、ハッと我に返って気まずそうに口をモゴモゴさせる私。
そんな私を見て、可愛いくりくりお目目のサナちん――こと、恐らく99.9999%の確率でゲームのキャラと同じ名前のサナちゃんは、クスッと楽しそうに、そして最高に優しく微笑んだ。

彼女は綺麗な白い手を、私に向かって真っ直ぐに差し伸べてくれた。

「私、安達咲夏っていうの! よろしくねっ」

そう言って、咲夏ちゃんは私の顔に自分の顔を近づけると、周りの生徒に聞こえないくらいの小さな声で、私の耳元にこう囁いた。

「あ、実は私……わけあって高校デビューなの! これからよろしくね、知華ちゃん」

「えっ、私の名前……ってか、ええええええ!?」

初対面で一歩も喋っていないはずの自分の本名までピンポイントで言い当てられ、私は本日何度目か分からない跳び上がるほどの衝撃を受けた。
そんな私を見て、安達咲夏ちゃんは照れたようにクスリと笑う。

「あはは、驚かせちゃってごめん。知華ちゃんのキーホルダー、裏側に『chika』って名前が書いてあったのが見えたから」

理由が分かって、私は一一安心のあまり腰が抜けそうになった。
私の前に立つ咲夏ちゃんは、少し頬を赤らめながら、まるで太陽に向かって大輪の向日葵がぱぁっと咲くような、極上の、精一杯の笑顔を私に向けてくれていた。

完璧なギャルの見た目。
だけどその中身は、私と同じように必死に自分を変えようと頑張っている、最高に愛らしくて純粋な女の子。

もう、ギャルデビューの失敗なんて恐怖はどこかへ吹き飛んでいた。
胸の奥から熱いものが一み上げてきて、私の視界がじんわりと涙で潤む。

「私っ、深瀬知華! よろしくねっ!! ――同志っっ!!」
「あ、じゃなくて、咲夏ちーーーんっ!!」

感情が爆発した私は、両手を広げて咲夏ちゃんに向かって勢いよく抱きついた。
初対面なのに、ギャルの距離感としてもさすがにバグっている私を、安達咲夏ちゃんはまるで聖母か天使のような優しい笑顔で、柔らかくしっかりと受け止めてくれた。

カーテンが春の風に揺れ、教室の大きな窓の外では、満開の桜がまるで私たちの運命の出会いを祝福してくれるかのように、美しくひらひらと吹雪いていた。









―――深瀬知華編、Fin.