夏と冬が重なれば。番外編

―――その時。

私の真横から、鈴が転がるような可愛い声が聞こえてきた。

「ねぇ、そのキーホルダーってもしかして、黒丸だったりする??」

(――へ!?)

思わずばっと顔を上げると、そこには、私の想像の斜め上を行く美少女が立っていた。
ゆるく毛先だけ巻かれたピンクベージュのロングヘアに、耳元でキラリと輝くスワロフスキーのピアス。
制服の短いスカートは、まさに研究し尽くされたような黄金比のミニスカート。
すらりと伸びる白い足。
そして極めつけは、くりりとした真ん丸の可愛いお目目。

それを見た瞬間、私のオタク脳に凄まじい衝撃が走った。

『こ、これは……っ!! レオ様の乙女ゲームに出てくる、あの清純派ギャル令嬢のサナ・ローズベリア・グレイル、略してサナちん(※家ではそう呼ばせて頂いている)にそっくりだぁあああ――!!!』

あまりの神がかったビジュアルに、心臓が爆発しそうになる。
私は推しキャラに激似の可愛い女子を前にして、極限まで緊張が高まり、脳のブレーキが完全にぶっ壊れてしまった。

「えあえええ、と、そうだよ!! 知ってるの?! サナちん!」

「え? ……あれ、私の名前……、なんでわかったの?!」

可愛いお目目をさらに丸くして、彼女は心底驚いたように声をあげた。

(……へ? 今、なんて?)

一瞬、思考がフリーズする。
私の脳内は大パニックに陥り、ものすごいスピードで文字が駆け巡った。

『(しくったぁあああ!!! 初対面なのに家での痛い呼び方を口走って墓穴掘ってやらかしたああ!!! 終わった、私の高校生活終了のお知らせ……って、ん?? 今、なんで名前わかったのって言った?? 同じ名前!? まさかの本名がサナちんと同じ名前とキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)』

2ちゃんねるのオタクばりに脳内が荒ぶりまくっていたが、現実の私は冷や汗ダラダラだ。
不審者だと思われて警察を呼ばれる前に、必死で言い訳の言葉を紡ぎ出す。

「ええ?!! あ、えと、ごめんね! 私の好きな小説に、出てくるキャラにそっくりでつい……! あ、あはは! そうなんだ! 黒丸知ってるって、偶然だよねぇーっ!!」

理由のわからないどもりから始まり、最後はギャル特有のハイテンションでなんとか着地させる。
怪しまれたかとヒヤヒヤしたが、目の前の四次元サナちん――もとい、サナちゃんは、「ふふっ、なんだ〜そうなの? びっくりしちゃった!」と、天使のような笑顔で笑ってくれたのだった。