夏と冬が重なれば。番外編

冬弥くんに促されるままに改札を通り、電車に揺られること約20分。
ガタゴトと響く心地いい振動に身を任せ、お喋りをしながら降り立った先は、都会の喧騒から離れた、緑豊かな自然があふれる静かな駅だった。

私は辺りをきょろきょろと見回し、不思議に思って隣を歩く冬弥くんに声をかける。

「ねぇ、冬弥くん。ここから海にでも行くの?」
「んー、どうだろうね」

冬弥くんは足を止め、振り返って自分の唇に人差し指を一本当てた。
「内緒」と言わんばかりの茶目っ気たっぷりなポーズ。その端正な顔立ちと不意に見せる仕草が、これまで何度も私をノックアウトしてきた冬弥くんの姿とデジャブして、私はまたしてもドキドキさせられっぱなしになってしまう。

そこから彼の案内に従って、のんびりと並んで歩くこと数分。
辿り着いた先は、広大な敷地を持つ向日葵畑だった。

「わあ……っ!!」

門をくぐった瞬間に目の前に広がった光景に、私は思わず息を呑んだ。
そこには、見渡す限りの庭一面に咲き誇る、鮮やかな黄色い向日葵たちの海が広がっていた。夏の強い太陽の光を浴びて、どの一輪も上を向き、元気よく、そして力強く美しく咲き誇っている。

あまりの感動に胸が高鳴り、私はすっかりお淑やかに歩くのも忘れて声を弾ませた。

「うわぁ〜っ!! すっごく綺麗……っ!!」

嬉しさのあまり少し小走りになりながら、私は向日葵畑の奥へと続く小道を進んでいく。私の背丈と同じくらい大きな向日葵たちに囲まれて、まるで秘密の迷路に迷い込んだみたいでワクワクが止まらない。

「ははっ、咲夏。そんなに急いだら危ないよ、待って」

後ろから、冬弥くんが愛おしそうに笑いながら、私の歩幅に合わせてゆっくりと追いかけてくる。
私は振り返り、胸いっぱいの感謝を伝えるために、めいっぱい笑顔を浮かべた。

「冬弥くん、ありがとう……! 本当に素敵だね!! すっごく嬉しい!! こんなにたくさんの向日葵、生まれて初めて見たよ!」

私の言葉を聞いた冬弥くんは、追いつくと同時に私の目の前に優しく立った。

「よかった。咲夏、こういう賑やかで明るい景色が、絶対に好きそうだなって思ってさ。……今年の夏は、絶対に咲夏と一緒にここに来たかったんだ」

そう言って、冬弥くんは眩しそうに目を細めて笑った。

青い夏空の下、太陽に向かってぱぁっと大輪を咲かせる向日葵たち。
だけど、私の目の前で優しく目を細めて笑っている冬弥くんの笑顔は、ここに咲くどの花よりも、世界の何よりも素敵だった。
彼の真っ直ぐな優しさに包まれて、私の胸の中にも、目の前の景色と同じくらい鮮やかで温かい向日葵が、一斉に咲き誇っていくような気がした。