夏と冬が重なれば。番外編

冬弥くんにいきなりギュッと強く抱きしめられて、私の頭は一瞬で真っ白になった。

「っ……、急にどうしたの……っ?」

駅の前ということもあって、周りの視線が気になって仕方ががない。顔をこれ以上ないくらい真っ赤に染めながら、彼の胸元に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で尋ねる。
すると、冬弥くんの腕に少しだけ、きゅっと力がこもった。

「ごめん。……本当に咲夏が、俺の彼女なんだって思ったらさ」

耳元で、少し掠れた冬弥くんの低い声が優しく囁く。

「急に実感したくなって。その、我慢できなかった……」

耳元に当たる彼の熱い息遣いと、その甘すぎる言葉に、私の心臓はいよいよ限界を迎えた。

「きゃー! 冬弥くんっ! もう反則ですっ!!」

恥ずかしさが一気にメーターを振り切り、私は冬弥くんの広い胸の中で、ポカポカと彼の身体を叩きながらじたばたと暴れた。
(究極に恥ずかしすぎるぅぅ!!! もう、冬弥くんは私をどうしたいんでしょうか!!)
顔の熱は収まるどころか、どんどん上がっていくのが自分でも分かる。茹でダコみたいに真っ赤になっている私を見て、冬弥くんは「くすっ」と愛おしそうに喉を鳴らして笑った。

「じゃあ、行こうか」

ゆっくりと身体を離した冬弥くんは、私の手元へ自分の大きな手を伸ばしてきた。
そして、私の指の隙間に、彼の長い指を一本ずつ滑り込ませるようにして、優しくしっかりと絡めていく。

(こ、こここ……恋人繋ぎだぁぁあああ!!!)

手のひらから直に伝わってくる冬弥くんの体温と、指先まで隙間なく密着しているこの感覚。
今日だけでもう何度目か分からないパニックが脳内を駆け巡り、私は歩き出しながらも、繋がれた手ばかりを何度も凝視してしまった。
学校の時とは少しだけ違う様子が、ただの男の子としての冬弥くんの独占欲と、ギュッと握られたその手からひしひしと伝わってきて、私は嬉しさと恥ずかしさで胸がいっぱいになりながら、彼の少し後ろを遅れないように必死についていった。