※ここからは、安達 咲夏視点の番外編になります※
あの熱くて、少し切なくて、でも最高にロマンチックだった夏祭りからの一件。
私、安達咲夏は、あの優しくて格好いい観月冬弥くんという素敵な男の子と、はれてお付き合いすることになった。
「うーん……全然終わらないなぁ」
夏休みも中盤。
私は自室の机に向かって、山積みになった夏休みの宿題と格闘していた。
数学の難しい数式を前にペンを動かしていると、机の上で静かに眠っていたスマートフォンが、突然短い電子音を鳴らして激しく震えだした。
画面に表示された文字を見た瞬間、私の心臓がドクンと大きく跳ね上がる。
『冬弥くん』
「きゃーーーっ!! どうしよう!!! 冬弥くんから電話だぁあ!!」
付き合ってからまだ数日。
文字のやり取りだけでも心臓が破裂しそうなのに、まさか通話がかかってくるなんて心の準備が全くできていない。
私はベッドの上に飛び込んで枕を抱きしめ、ジタバタと足をバタつかせながら大はしゃぎしてしまった。
「ふぅ……よし。落ち着け、私」
コホンと一つ小さく咳払いをして気を引き締め、通話ボタンを押して耳元に当てる。
少し照れくさくて、緊張で震える声を必死に抑えながら、言葉が口を突いて出た。
「も、もしもし……!」
『もしもし、咲夏? ――はは、もしかして、まだ緊張してる?』
スピーカーの向こうから聞こえてきたのは、耳がとろけてしまいそうなくらい優しくて、少し楽しそうな冬弥くんの低い声だった。
私の緊張がバレていたのが恥ずかしくて、私は顔を真っ赤にしながら慌てて首を振る。
「う、ううんっ! ちょっとびっくりしただけ。……どうしたの?」
『うん。今度の日曜日さ、咲夏とデートしたいなと思って。それでお誘いの電話だよ。……空いてる?』
デートのお誘い。
冬弥くんの口から出たその甘い響きに、頭の中が真っ白になる。
優しく、だけどどこか私の答えをドキドキしながら待っているような冬弥くんの気配が愛おしくて、私はベッドから飛び上がる勢いで答えた。
「うん! 空いてる! 喜んで行くっ!」
『よかった。じゃあ、詳しい場所と時間はまたメッセージで送るね。楽しみにしてる』
通話が切れた後も、私の心臓はうるさいくらいの速さで鼓動を刻み続けていた。
そして迎えた、付き合って初めての初デート当日。
私はいつも以上に気合を入れ、オシャレに全力の磨きをかけた。
ピンクベージュのロングヘアをいつもより丁寧にゆるふわに巻き、睫毛を綺麗に上げてリップを少しツヤのあるピンク色に染める。
お気に入りのミニスカートを穿き、お洋服のシワを何度も伸ばして鏡の前でくるりと回った。
(よし……! 今の私、ちゃんと可愛くなれてるかな?)
鏡の中の自分に向かって小さくガッツポーズを決め、お気に入りのバッグを手にする。
大好きな冬弥くんの、世界で一番特別なお姫様になるために。
これから始まる二人きりの甘い時間に胸を高鳴らせながら、私は待ち合わせ場所へと元気よく飛び出していった。



