夕食の特製ハンバーグを全員で綺麗に平らげ、お茶をすすりながら一息ついた、その瞬間だった。
リビングの座卓の端で、姉、紬葵が、おもむろに空になった麦茶のコップをトントンと叩いた。
「――っていうわけでさ! 外はもうすっかり真っ暗だし、奏汰くんの家(西園寺家)の別邸まで帰すのも危ないじゃん?
今夜はうちに泊まっていきなよ!」
チャラチャラとした軽い口調で、とんでもない核爆弾がリビングに投下された。
「は、はあぁぁぁあ!? お前、何言ってんだよ紬葵! うちには客間なんてねえだろ!」
伍は飲んでいた麦茶を本気で吹き出しそうになりながら、地声の低いトーンで叫んだ。
お互いに中身が「男」だと知って付き合い始めたのは、つい昨日のことだ。
まだ唇に触れ合ったキスの余韻すら整理できていないというのに、いきなり実家での初めてのお泊まり会なんて、心臓が何個あっても足りない。
「え? 客間ならあるよ。……ほら、伍の部屋」
「それ客間じゃなくて俺の個室だろ!! ベッド一個しかねえよ!!」
「いいじゃん、男同士なんだし。ね、奏汰くんもその方が嬉しいでしょ?」
紬葵はセンター分けの前髪を指先でクイッと跳ね上げ、ニヤニヤとした意地悪な笑みを奏汰に向けた。
一見すると弟をからかって楽しんでいるチャラい姉のノリだが、その瞳の奥には
「ほら、2人きりになれるチャンスをあげるよ」
という、一途な恋を応援したいお姉ちゃんとしての不器用な優しさが満ちていた。
自分自身が浮気男に裏切られて傷ついたばかりだからこそ、弟の「本気の純愛」を全力でバックアップしたいのだ。
「……有栖川さんがそう言ってくださるなら、僕は、お言葉に甘えたいです」
奏汰は少し耳を赤くしながらも、お嬢様時代の麗華からは想像もつかないほどハッキリとした、男らしい地声で即答した。
「おい奏汰! お前まで乗っかるな!」
「だって伍、僕は少しでも長く君と一緒にいたいんだ。学園に戻ったら、またみんなの前でお嬢様のフリをしなきゃいけない。男の僕として、男の伍に触れられる時間は……今しかないんだよ? 駄目かな?」
座卓の下から、奏汰の少し大きな手が伸びてきて、伍のゴツゴツとした手をぎゅっと握りしめる。
衣服越しに伝わる彼の真っ直ぐな熱量と、至近距離で見つめてくる切れ長の瞳の圧倒的な破壊力。
伍は「うっ……」と言葉を詰まらせ、茹でダコのように真っ赤になって俯くしかなかった。
「ほーら決まり! じゃ、奏汰くん、先にお風呂入っちゃって!」
紬葵がノリノリでバスタオルを差し出し、伍のお泊まり会の包囲網は完全に完成してしまった。
リビングの座卓の端で、姉、紬葵が、おもむろに空になった麦茶のコップをトントンと叩いた。
「――っていうわけでさ! 外はもうすっかり真っ暗だし、奏汰くんの家(西園寺家)の別邸まで帰すのも危ないじゃん?
今夜はうちに泊まっていきなよ!」
チャラチャラとした軽い口調で、とんでもない核爆弾がリビングに投下された。
「は、はあぁぁぁあ!? お前、何言ってんだよ紬葵! うちには客間なんてねえだろ!」
伍は飲んでいた麦茶を本気で吹き出しそうになりながら、地声の低いトーンで叫んだ。
お互いに中身が「男」だと知って付き合い始めたのは、つい昨日のことだ。
まだ唇に触れ合ったキスの余韻すら整理できていないというのに、いきなり実家での初めてのお泊まり会なんて、心臓が何個あっても足りない。
「え? 客間ならあるよ。……ほら、伍の部屋」
「それ客間じゃなくて俺の個室だろ!! ベッド一個しかねえよ!!」
「いいじゃん、男同士なんだし。ね、奏汰くんもその方が嬉しいでしょ?」
紬葵はセンター分けの前髪を指先でクイッと跳ね上げ、ニヤニヤとした意地悪な笑みを奏汰に向けた。
一見すると弟をからかって楽しんでいるチャラい姉のノリだが、その瞳の奥には
「ほら、2人きりになれるチャンスをあげるよ」
という、一途な恋を応援したいお姉ちゃんとしての不器用な優しさが満ちていた。
自分自身が浮気男に裏切られて傷ついたばかりだからこそ、弟の「本気の純愛」を全力でバックアップしたいのだ。
「……有栖川さんがそう言ってくださるなら、僕は、お言葉に甘えたいです」
奏汰は少し耳を赤くしながらも、お嬢様時代の麗華からは想像もつかないほどハッキリとした、男らしい地声で即答した。
「おい奏汰! お前まで乗っかるな!」
「だって伍、僕は少しでも長く君と一緒にいたいんだ。学園に戻ったら、またみんなの前でお嬢様のフリをしなきゃいけない。男の僕として、男の伍に触れられる時間は……今しかないんだよ? 駄目かな?」
座卓の下から、奏汰の少し大きな手が伸びてきて、伍のゴツゴツとした手をぎゅっと握りしめる。
衣服越しに伝わる彼の真っ直ぐな熱量と、至近距離で見つめてくる切れ長の瞳の圧倒的な破壊力。
伍は「うっ……」と言葉を詰まらせ、茹でダコのように真っ赤になって俯くしかなかった。
「ほーら決まり! じゃ、奏汰くん、先にお風呂入っちゃって!」
紬葵がノリノリでバスタオルを差し出し、伍のお泊まり会の包囲網は完全に完成してしまった。

