「待って」
振り返った菜央は、なんともない顔で。
泣いてなんかなかった。
久しぶりに見た。
口元に少し笑みが見えた。
「サンサン抱き締めながら、一緒に映画でも観よ?それとも、お散歩する?」
菜央は変わらない表情で、しばらく何も答えなかった。
「帰る」
「いや、帰んないでよ。俺まだ菜央といたいのに」
「サンサンに色んな景色見せてあげるんだー」
「ん?」
「青い海も、青い空も、街の喧騒も、静かな路地も。色んな所連れてってあげる。そしたら、サンサンの思い出になるでしょ?」
「分かった分かった、じゃあドライブ行こ。海、連れてってあげるから。準備するから一旦家おいで」
「何で一緒なの」
菜央は少しムスッとした。
「え?」
「私別に、ついてきてなんて言ってない」
「俺は単に、大好きな彼女と、少しでも長く一緒にいたいだけだよ」
またいつもの泣きそうな顔で、少し嘲笑するように
「彼女?いずれ都合のいい女にするだけなのに?」
そう言った。
いつまでも伝わらない。
俺の真面目な気持ちは、まっすぐな気持ちは。
俺の好きに力はないんだろうか。



