泣きじゃくる君にキスを


心が痛い。

出逢う前に遊んでいたことがあるのは確かに事実だ。

だけど今、目の前にいる菜央を一番に大事にしている方がもっと事実だ。


「好きだよ菜央」


この言葉も、宙に浮かんで消えていった気がした。

菜央の元には届いてないような気がした。


「菜央、今日は何する?何観よっか。映画?ドラマ?アニメ?ゲームもいいね、俺そんな強くないけど」

「何もしたくない」

「外行く?」

「それなら帰る」

「困ったな…俺は、菜央と一緒にいたいのに」

「やれたら満足なくせに」


そう呟いて、菜央は立ち上がった。


そりゃ勿論、菜央とだってしたくないわけない。

だけどそれ以上に、菜央と思い出作りたい。

2人きりの時間を大切にしたい。

ただ笑っていたかった。


菜央は玄関に向かっていった。


「どこ行くの?帰るの?」

「やるわけでもない女といたって時間の無駄でしょ」

「そんなことないから、おいで?」


俺の言葉は虚しく、靴を履いてドアを開けて帰ってしまった。

俺の彼女…なのにな。

大事な彼女なのにな。

過去の行いが、影響するなんて思っていなかった。