泣きじゃくる君にキスを


菜央の持っているトートバッグには、サンサンというキャラがプリントされており、マスコットもついている。


「サンサン、好きなの?」

「うん、好き」

「そっか。最近俺も知った!」


好きの対象はサンサンだと分かってる。

だけど、好き、が妙に響いた。


「彼氏、いるの?」

「いたら来てない」

「まあそっか。じゃあ…好きな人は?」

「周りに女子しかいない」

「そうなんだ」


だったら…。


「ねえ。俺にチャンスある?」

「付き合えるか?ってこと?」

「そう。菜央のこと見てると、すごい不思議な気持ちになる。今まで感じたことないような、恋心をくすぐられる」

「…気のせいでは」

「そんなことない。だからさ、付き合ってみてもらってもいいかな」


菜央は黙考した。


「彼氏、になるの?」

「そうだね、彼氏だね」

「いいよ」

「まじ?!嬉しい!」


静かなカフェ内で大声を出してしまい、口に手を当てる。

ただ幸せなカップルになる予定だった。


でも、そうはいかなかった。