泣きじゃくる君にキスを


付き合って半年が経つ。

飽きずに泣きながら家にやってくる菜央。

家に来ても、特に何もしない。

俺がただ、好きだよって伝えて、空気に消えるだけ。

これだけ何の進展もないのに、菜央のことは手放したくなかった。

初めて、あんな純粋に一瞬で恋に落ちた。

俺のあの感覚を信じたかった。


仕事の帰り道。

だる…と歩いていた。

なんとなく、向かい側の道に目をやった。


「菜央…?」


菜央がいた。

でも彼女だけじゃなかった。

いたのは、クールそうなイケメンだった。

普通に喋っていた。

時折笑顔を見せながら。

浮気してんのは、そっちじゃんかよ…!


俺は走ってそこへ突撃した。


「菜央何してんの。浮気してんのは菜央じゃん」


横にいる男は、俺のことをどこか呆れたような目で見ていた。


「姉になんか用すか。元やりまくり彼氏さん」


弟いたのか…の前に、元やりまくり彼氏ってのにカチンときた。


「過去の話だろ、姉弟揃ってなんなんだよ…」

「それで拗らせてるのはどこの誰すか」

「それは…でも、過去なんて変えられないし」

「今の、女性関係はまっさらみたいだから、そこはいいんじゃないすか。…でも、半年も付き合ってて、まだ何も姉のこと分かってないんすね」

「は?」

「うちの姉も、なかなか拗らせてますよ。じゃ、帰るんで」


弟に続いて、菜央も帰ってしまった。

目も合うことなく。