推しの声がメロすぎて困ってます

家に帰ってからも、
瀬那の言葉が頭から離れなかった。

「誰かの推しか……」

ベッドに寝転び、天井に貼られた橘悠真の等身大ポスターを見つめながら、小さく呟く。

考えたことはなかった。

でも――

『誰かの推しになる』

それって、すごく素敵なことだと思った。

正直、少しだけ。

『なってみたい』

そう思った自分もいる。

だけど、現実は違う。

私はずっと推しばかり追いかけてきた。

自分を磨くことなんて後回し。

特技もない。

夢もない。

そんな私が、誰かの「推し」になれるわけがない。

「……考えるだけ無駄か」

自分にそう言い聞かせた、その時だった。

ピコン。

スマホが小さく震える。

「真美さん?」

画面を開くと、メッセージが届いていた。

『今度、コスプレイベントに参加する友達がいてね、
一緒にやってくれる子を探してるの!瑠奈ちゃんを紹介してもいいかな?』

「……え?」

思わず画面を二度見する。

コスプレ?

私が?

そんなの、一度もやったことがない。

最初に浮かんだのは、「無理」の二文字だった。

でも、いつもお世話になっている真美さんからのお願い。

断るのも申し訳ない。

それに――

さっきまで考えていた。

『誰かの推しになる』という言葉。

その言葉が、頭の中で静かに響く。

「……話だけなら、聞いてみようかな」

私はゆっくりとスマホを持ち直し、
返信画面を開いた。