推しの声がメロすぎて困ってます

「月島〜。寝るな〜」

数学担当の竹下先生の声が教室に響く。

「ハッ!」

その一言で、私は勢いよく顔を上げた。

「ず、ずびばぜん……」

慌てて口元のよだれを拭いながら謝る。

その瞬間――

教室中がどっと笑いに包まれた。

「月島、今日ひどいな〜」

「昨日何してたんだよ〜」

クラスメイトたちの笑い声が飛んでくる。

……言えない。

徹夜で推しのライブを見てました、なんて。

いや、言っても別にいいんだけど。

結局、その日も私はほとんどの授業で眠ってしまった。

まぁ、いつものことなんだけど。

うとうとしながら書いたノートを見ると、文字はぐにゃぐにゃ。

まるでミミズが大行進したみたいだった。

「……終わった」

これじゃ、後で見返しても絶対読めない。

成績が落ちたら、ママに怒られる。

だから、夜は本当はちゃんと寝なきゃいけない。

……でも。

オタクは、簡単にはやめられない。

推しが尊いんだから、仕方ない。

それに――今日は金曜日。

日曜日には、ずっと楽しみにしていたイベントが待っている。

そのためにも、今日を乗り切らなくちゃ。

「……よし」

私は眠気で重くなった頬を軽く叩き、
自分に気合いを入れた。

推しのためなら、このくらいの睡魔。

なんとかしてみせる!