推しの声がメロすぎて困ってます

「おはよ……」

教室へ入るなり、
私は力尽きたように机へ突っ伏した。

「どした!?」

瀬那が慌てて顔を覗き込む。

「うぅ……」

重たい瞼をなんとか持ち上げる。

「うわっ!」

私の顔を見た瞬間、瀬那が思わず一歩後ずさった。

「どしたん?」

梨央奈とゆあも近寄ってくる。

「ちょっと二人とも!瑠奈の顔見て!」

瀬那に言われるがまま、二人が私を覗き込んだ。

「えっ、何その疲れ切った顔!」

「クマすご〜」

 二人は少し引きつった笑みを浮かべる。

「昨日さぁ、徹夜で推しのライブ見てたらしいよ」

瀬那が呆れたように肩をすくめる。

「バカじゃん」

梨央奈が即答した。

その言葉が少し刺さった。

「でも、ちょっとわかるかも」

ゆあが苦笑しながら言う。

「え、ゆあも?」

「私も推し見てると時間忘れちゃうもん。
気づいたら夜中の三時とか普通にある。」

「ほらね!」

私は瀕死のまま親指を立てる。

「仲間!」

「いや、仲間見つけて喜ぶところじゃないから。」

瀬那がすかさずツッコむ。

みんなが楽しそうに話している。

だけど私は、眠気が限界だった。

今日の授業は、一つも頭に入る気がしない。

それでも、不思議と後悔はなかった。

昨夜のライブ。

悠真の歌声。

五人の笑顔。

その全部が、今も頭の中で何度も再生されている。

幸せだったなぁ……。

思わず口元が緩む。

「……なにニヤニヤしてんの?」

瀬那が呆れ顔で聞く。

「いつものことでしょ」

梨央奈が笑う。

「瑠奈だもん」

ゆあもクスクスと笑った。

もう誰も、私が推しのことを考えてニヤけているくらいでは驚かない。