空 ~kuu~

ピンポンパーンポーン~♪(機内アナウンスの音)

「間もなく、那覇空港に到着いたします、ご搭乗ありがとうございました。」

ピンポンパーンポーン~♪(機内アナウンスの音)




ガラガラガラ・・・(キャリアケース引く音)

タッ・・・・(歩く音)



ザー・・・(波の音)

ポスッ(砂浜に座る音)



「・・・めっちゃ綺麗・・・」



ザー・・・(波の音)
ザー・・・(波の音)
ザー・・・(波の音)

「・・・・・」



ザッザッザッザザッ(砂浜を走る音)



「このまま海に消えてなくなりたい・・・」



ギュ・・・(突然後ろから腕を回され抱きしめられる音)



「!?何!?」




彼女は無理やり後ろを振り返る。

「・・・何やってんの?」

「・・・なんでいるんですか?」

「それはこっちのセリフ。神楽、今日出勤じゃないの?」

「休みですよ」

「休んだんでしょ。てか何日も休んでるよね?」

「ていうか、江波さんこそ今日出勤じゃないんですか?なんで沖縄に?」

「石井さんを問いただした。なんか上も何人か知ってそうな感じだったけど私に言ってこないし。
石井さんに聞いたら私にしか助けられないって意味不明なこと言われたし。てか何聞いてるの?」(イヤホンを奪う)



「やだ、やめて!!!!!」

という言葉もむなしく、江波は奪ったイヤホンを自分の耳に装着した。
早く音声を止めたくても焦って手元が狂い結局そのまま聞かれてしまった。



「これ・・・前の飲みの?」

「・・・・・はい」

「何か言質取ろうとしてる?」

「違います」

「じゃあ何でこんなの聞いてるの?」

「・・・・・4月から沖縄異動するんですよね。」

「・・・・・(溜息)
まだそれ公になってないことなはずなのに何で知ってるの?」

「この間課長と江波さんが面談している隣のブースに私いたんですよ。」



「・・・だからそういう話ってオープンなところでするべきじゃないんだよね。」

「私の面談はあの後だったんですけど、面談で私は異動あるのかって聞いたら無いって言われてその時点で退職の意向を課長に伝えたんです。そしたら甘えてるって言われてもう何もかも嫌になっちゃって。前にも課長に言われましたがまた自分が代わりになるみたいなこと言われてそれに腹も立っちゃって。」

「課長は神楽のこと凄く心配しているんだよ。」

「そう言われても全然あの人の行動や発言には全く説得力を感じません!!後出しじゃんけんでいつも暗い顔してるから心配してたって言いますけど、じゃあ何でそう思った時に声かけてくれないんですか!?そんな人に説得力を感じることは出来ないです。」

「私だって、私からは神楽に声かけてないじゃん。」

「それはそうなんですけど、管理職1年目に自分が会社からどう評価されているか不安で江波さんに面談お願いしたじゃないですか。その時、自分でも気付いていないことまで江波さんは気付いてくれて具体的な評価を自分の言葉で伝えてくれたじゃないですか。その時、凄い嬉しくて。自分が頑張っていた意味あるなって自分の存在を肯定することが出来た。そんな発言や行動、課長はしてくれないです。」

「私なんかよりよっぽど人のこと観察はしているだけどね。」

「行動や言葉が伴っていなければ意味ありません。」

「そっか・・・で、なんでそれ聞いてるの?」

「もう一緒に働けないと思ったら辛くて、江波さんの声が聞きたくなったんです。」

「・・・・・。とりあえず、ここは冷えるから場所移そうか。ついてきて。」



江波は有無を言わず神楽の腕を引き上げて立ち上がらせた。

「どこ行くんですか?」

「いいから。」



言われるがままついていった先は神楽がいた海から歩いて10分くらいのところにある一軒家の家だった。
表札には【江波】とかいてあった。

「ここって・・・」

「そう、私の実家」

「実家!?」

「今、母1人で暮らしてるからたまに様子見に帰ってきてるだけど、今日は連絡していないし空港から直で海行ったからまだ私が来ること知らないんだよね。」



ピンポーン♪(インターホンの音)

「はい?」

「和葉です」

「え?あんたいきなり帰ってきてどうしたん?」

「後で話すよ。ちょっと人連れてきてるから早くドア開けて」

「はいはい」



ガチャ(扉が開く音)