ちょっと顔を隠す、咲希ちゃんがいつもやってる悩み顔。
これだけの情報で伝わるなんて、もちろんだけど少しも思ってない。
ほんの一部しか話してないから。
「マルシェのときにお店のショップカードを渡されてたの。それで気になって昨日の放課後行ってみたんだ」
「どうだった?」
「すっごく素敵なお店で、また行ってみたくなったよ。店員さんにもぜひ来てねって言われたし」
昼休みのざわめきなんてなんのその。私と咲希ちゃんの机の周りは2人だけの別世界。
残り少ないメロンパンを一口頬張った咲希ちゃんと、チーズ入りウィンナーを口に運ぶ私。
お互いの悩みを一緒に悩んで、食べながらたくさん話す。そんなことの繰り返しが、なんてことない日常の、特別に楽しいひとときなんだ。
「葵鈴の中に、また行ってみるって選択肢はあるんだよね?」
「あるっちゃある。放課後の時間、今までずっと持て余してから。その時間が幸せな時間に変わるなら最高だもん」
「つまり、葵鈴はそこに行くのが幸せな時間だと」
「そうなるね……」
ここで咲希ちゃんは私のほうを見てにこって笑う。
よかったね、と言うように。



