少し寂しそうな顔を見て、聞いちゃいけないことを聞いた気分になる。
思い出したくないことを思い出してしまったとき、人はああいう顔をすると思う。
悲しいし、寂しいし、辛いし。そういう気持ち。寂しい静寂があたりを満たした。
もう少しここにいたい気持ちはすごくあったけど、自分勝手なわがままは言わない。
「……あの」
「──あっ、すみません。少しぼーっとしていましたよね。」
「全然大丈夫です。紅茶、ごちそうさまでした」
もっとゆっくり飲みたかったな。
私が乗る電車の時間まで少しあるけど。1人になりたいときってあると思うから。
「電車の時間もあるので、そろそろ帰ります」
「そうですね、いくら明るいと言っても5時は過ぎてますもんね」
「はい。今日はすみませんでした。何にも買わないのに居座っちゃって紅茶まで……」
「おれ───僕がやりたくてやったことなので気にしないでください」
帰りたくないな。ずっとこの温かい空間にいたい。
私は今まで男の人が苦手だったのに、こんなこと思うのはどうしてだろう。
この店員さんといると落ち着く。
「──ありがとうございました」
「いえ、お気をつけて。またいつでも来てくださいね」
「……はい」
いつもは遠慮しがちな私がここまで行動できたこと。
私も一歩成長してるのかな。
帰り道。見上げた先にある赤を、あの人に見せたい。なんでか、そう思った。



