「ごめん!お待たせ!」
リビングに戻ると、まるで我が家のように、食後のコーヒーを飲んで母と話している未紗。
「あんたの家か」
と笑いながらツッコむと
「誰のせいよ」
とツッコミ返されぐうの音も出ない。

「行ってきまーす」
「おばちゃん、また来るねー」
と家を出て私の車で葬儀場まで向かった。

「ふたりで家出て、歩きじゃのうて車とは!うちらも大人になったねー。」
「大人どころじゃないじゃろ?うちら、アラフォーに片足突っこんどるけんね?」
と笑いながら車を走らせた。

「ねぇ、聞いてもええかね?」
「なに?」
「あいつ⋯よし⋯事故⋯じゃったんじゃろ?」
私が重い口を開くと
少しの沈黙の後、未紗が静かに口を開いた
「⋯うん⋯よしね、最近忙しそうなかったんよ。ネンショー出て、まじめにしよったんじゃけど、去年くらいから仕事が上手いこといかんでね⋯居眠りじゃったらしい。幸い⋯言うたらアレかもしれんけど、相手がおらんかったのが唯一の救いじゃ。」
居眠り運転⋯
事故の原因まであの人と同じ
「ほっか⋯」

そのまま、お互いに口を閉ざし、葬儀場に着くまでお互い口を開く事はなかった。

葬儀場の表に着くと、懐かしい顔ぶれが揃っていた。
「まな!よう帰ってきたね!元気しとったん?」
「ほんまよ。いつぶりかのー?」
「お前、今何しよんや」

麻美、ひで、ひろ⋯
懐かしい仲間。
笑う顔も変わってなくて、少し安心した。
違うのは、歳を重ねてそれぞれの苦労や孤独、それぞれの今までの人生が刻まれた顔。
そして、少なくなってしまった人数。
ふっと笑って
「うん、久しぶり。」
と答えた。
「よっしゃ、行こうか。」
5人揃って葬儀場に入った。

さほど大きくない会場だった。
懐かしい顔、知らない顔様々だった。
懐かしい顔は、あの時の時間を知っている人達。
そして、知らない顔は、私の知らないよしを知っている人達。
その人達が手を合わせている方向にいるのは⋯
よしだ⋯
遺影のよしは、綺麗な顔をしていた男の子のよしは、無骨な男になっていた。
短髪で、顎髭を生やしていた。
言われなければ、すぐによしだとは気付かないかもしれない。
それでも、私の大好きだった目は、あの時と同じだ。