「わぁ〜、今日は月が綺麗に見えるね」
「満月だな」
そう言いながら、滑り台とブランコしかない小さな青葉公園のベンチに二人で座り、夜空を眺める。
すると、絃士が不意に「都子」とわたしの名を呼んだ。
「ん?なに?」
わたしがそう訊くと、絃士は微笑んだあとでポケットから何かを取り出した。
それは、濃紺色の四角い箱だった。
「―――えっ」
その箱を見て、わたしはあることを悟る。
すると、絃士はゆっくりとその箱を開けた。
その箱の中には、月の光で煌めく指輪が輝いていたのだ。
「都子、約束からだいぶ遅れちゃったけど···」
絃士はそう言いながら、箱の中から指輪を取り出し、わたしの左手を取った。
「都子、これから先もずっと俺に都子を守らせてください。都子の傍にいさせてください」
それから絃士はゆっくりとわたしの左手薬指に指輪をはめた。
「―――俺と結婚してください」
わたしの薬指で輝く婚約指輪。
それはきっと、何年も前に用意していてくれていたものだろうが、サイズはピッタリで色褪せてなどいなかった。
わたしは指輪とプロポーズの言葉に感動し、声を震わせながら「はい、よろしくお願いします」と返事をした。
クールな絃士の瞳には月が浮かんでおり、目尻が下がり微笑むと、絃士はそっとわたしを抱き寄せた。
そして小さな声で「ありがとう」と囁いた。
それからわたしたちは見つめ合うと、夜の公園でキスを交わした。
いつもなら冷たい夜風が吹く時間帯だが、その時わたしたちは寒さを感じなかった。
いつもよりも少し長いキスを交わし、そして鼻先が触れ合う距離で見つめ合ったあと額をつけ、わたしたちは微笑み合った。
その時にわたしは思った。
捜査一課の仕事は危ないし、忙しくて帰って来られない事も多い。
いつか絃士が仕事ばかりになってしまったとしても、わたしは彼を愛そう。
だって、絃士は無口でクールに見えて不器用だけど、愛のある人だから。
よくドラマに出てくる刑事さんの奥さんのように「また、仕事ばかりで!」と愚痴を漏らしながらも、本当は彼の事が大好きでいつまでも応援して陰で支えてあげられるような―――
そんな妻にわたしはなりたい。
「都子、愛してる」
「絃士···、わたしも愛してるよ」
―END―



