あざ恋王子は近すぎる。

私一人が、過去の距離感に囚われているのが、急に恥ずかしくなってくる。

「……はぁ」

ため息をついた瞬間。背後から伸びてきた長い腕に、ガシッと手首を掴まれた。


「ひーな。見っけ」


低くて、少し弾んだ声。誰の声かなんて、分かりすぎてる。
振り返るよりも早く、私は空き教室の薄暗がりへと引っ張り込まれていた。

「え、ちょっと……蓮!?」

バタン、と静かに扉が閉まる。埃っぽい空気の中に、蓮の柔軟剤の甘い香りがふわりと混ざった。

「急に引っ張らないでよ! 誰かに見られたら……」

「大丈夫、ここ誰も来ないから」
蓮は私の言葉を遮り、教室の壁に私を軽く押し付けた。大丈夫、じゃないじゃん。