あざ恋王子は近すぎる。

手元に残された、蓮の柔軟剤の香りが残る傘。
そして、冷たい雨の匂い。



次の日から、蓮は本当に私の前に姿を現さなくなった。
学校に来ても、廊下ですれ違っても、目を合わせることすらしてくれない。
完全に他人みたいに、私の横を通り過ぎていく。



「どうして……? 好きだって言ってくれたのに」



蓮の「距離を置こう」という言葉の裏にある、本当の意味。

あの日、蓮がポケットの奥に隠していた秘密が何なのか、当時の私はまだ、何も知らなかった。


ただ、心にぽっかりと空いた穴が、雨の冷たさのようにじんわりと広がっていくのを感じていた。