あざ恋王子は近すぎる。

蓮は傘を持つ手に力を込め、ポツポツと、血を吐くような切なさで言葉を紡いだ。


「『幼なじみ』って便利だけど、たまに大嫌いになる。……だって、これ以上近づいたら、お前を困らせちゃうでしょ?」


「え……?」


困らせるって、どういうこと?私が問いかけるより早く、蓮は悲しそうに微笑んだ。


「だから……少しだけ、お互いのために距離を置こう。学校でも、しばらく話しかけないで」


「どういうこと?蓮! なんで急に――」




蓮は自分の傘を私に握らせると、自分は雨の中に一歩踏み出した。
大粒の雨が、蓮の茶髪を瞬く間に濡らしていく。


「ごめんね、陽菜。……お姉ちゃん、バイバイ」


最後に、子供の頃によく呼んでいた『お姉ちゃん』というあだ名を呟いて、蓮は雨の中を振り返らずに走り去ってしまった。