あざ恋王子は近すぎる。

文化祭の終わりを告げる、後夜祭のアナウンスが校内に響いていた。

夕暮れのグラウンドからは、軽音部の演奏や生徒たちの歓声が微かに聞こえてくる。



私は一人、誰もいない渡り廊下のベンチに座り、赤く染まっていく空を見上げていた。


『特別なのは陽菜だけなのに……』
新鮮な眼差しと、蓮の言葉が頭から離れない。あんなに切ない顔をした蓮を、私は見たことがなかった。

ふと、幼い頃の記憶が鮮やかによみがえる。
まだ蓮が普通の男の子で、私の後ろを泣きながらついてきていた、小さな頃の記憶。
テレビの中のきらびやかな世界なんて、どこにもなかった。

あの頃の私たちは、世界のどこよりも近い場所にいたはずだった。