あざ恋王子は近すぎる。

蓮は一歩、さらに距離を詰めてきた。
お化け屋敷のチープな照明が、蓮の綺麗な顔を怪しく、だけど酷く魅力的に照らし出す。


「さっきも、あの瀬尾先輩と親しそうに話してた。俺が他の子に囲まれてるの、気にならないの?」


少し低くなった蓮の声。学校の『王子様』としての笑顔は、そこには一切なかった。


「……気になるよ。気になりすぎて、自分がファンの一人みたいに思えて、苦しいんだよ!」


思わず感情が溢れて、本音が口から飛び出していた。
蓮は目を見開いたあと、ふっと切なそうに視線を落とす。


「一般人とか、ファンとか関係ない。俺にとって、特別なのは陽菜だけなのに……」



誰もいない薄暗がりのなか、ふたりのもどかしい想いが静かに交錯していた。