あざ恋王子は近すぎる。

「えっ……!?」


短い悲鳴は、大きな手のひらで優しく塞がれた。


「しーっ。陽菜、静かに」


耳元で聞こえた、大好きな声。
暗闇に目が慣れてくると、衣装のシャツを着崩した蓮が、私を壁との間に閉じ込めるようにして立っていた。


「蓮……!? なんでここに、仕事は?」

「今は休憩。……っていうか、陽菜が全然俺のこと見に来てくれないから、迎えにきちゃった」



蓮は手のひらをどけると、ふにゃりとあざとく微笑んだ。
だけど、その瞳の奥には、どこか焦ったような色が混ざっている。


「だって、蓮の周りにはたくさんの人がいるし、私なんか行ったら迷惑でしょ」
人気者の周りにいるだけで、私だってたくさんの苦労をするのだ。やや吐き捨てるように、そんな言葉を吐いてしまった。


彼が発した答えは、私が想像していたものをはるかに超えてきた。

「陽菜が来るのが、迷惑なわけないじゃん」