あざ恋王子は近すぎる。

「陽菜、あいつのこと見てると疲れるだろ」



荷物を抱えた瀬尾くんが、私の視線を追ってぽつりと言った。


「一ノ瀬はもう、お前一人のものじゃない。……周りを見てみろよ。ファンだらけだ」


瀬尾くんの言葉は、冷たいけれど事実だった。私がいくら蓮を特別に思っていても、あそこには近づけない。
私はただの『幼なじみ』という過去の肩書きを持っているだけの、ファンの一人に過ぎないのかもしれない。


胸の奥がキュッと締め付けられる。私は溢れそうになる涙をごまかすように、


「ちょっと休憩してくるね」
と、クラスの出し物であるお化け屋敷の裏へと歩き出した。

薄暗い、パーテーションで区切られた通路。
誰もいないはずのその場所に、不意に強い力で引き込まれた。