あざ恋王子は近すぎる。

秋になり、学校は文化祭の熱気に包まれていた。
蓮の出演したドラマは大ヒットし、今の彼は完全に時の人だ。
混乱を避けるため、蓮は文化祭のシフトには入らず、基本的には裏方として控室に待機することになっていた。


「一ノ瀬くん、写真撮ってください!」

「あ、いいよ。はい、チーズ」

廊下の向こうで、他校の女子生徒たちに囲まれている蓮が見える。
嫌な顔一つせず、完璧なプロの笑顔で応じる姿は、もう私だけの幼なじみじゃない。


「陽菜、そっちの段ボール運ぶの、手伝うよ」「あ、瀬尾くん。ありがとう」

私は自分のクラスの模擬店の準備に追われていた。一般人の私と、芸能人の蓮。
あの夜、ベランダで繋いだ手の熱が、まるで嘘だったみたいに遠く感じられた。