あざ恋王子は近すぎる。

「ほら、陽菜。ここから。ヒロインの『どうしたの?』ってセリフの後から読んで」



「……もう、一回だけだからね」



仕方なく台本を受け取り、文字を追いかける。


「『……どうしたの?』」

私の拙いセリフに合わせ、蓮がベッドからゆっくりと起き上がった。
その瞬間、彼の全体の空気がガラリと変わる。ふにゃりとしたいつもの幼なじみの顔が消え、一人の「男」の顔になった。
蓮は静かに床に降りると、私のすぐ目の前に膝をついた。
狭い部屋の中で、ふたりの影が夕暮れの床に重なる。

「ん、ちょっと休憩」

蓮はそう言うと、私の膝の上にコロンと自分の頭を乗せてきた。いわゆる、膝枕の体勢だ。