好きな人が私の席に座ってたら?

好きな人のことって、すっごく気になる。

何が好きなのかな。

放課後は何をするのかな。

授業中、どこを見てるのかな。

恋愛って、人をダメにしちゃう……。

          ♡♡♡

「何してんだろ、私……」

下駄箱で待ち伏せとか、もはやストーカーじゃん!

私、日生 桃花(ひなせ ももか)は今、絶賛ストーカー中です。

中学で知り合って、想いを伝えないまま高校生に……。

いつか想いを伝える!って思っていたのに、私は見てしまった。

彼――日高 流星(ひだか りゅうせい)が、女の子に告白されているところを……!!!

いや、ね?

顔もカッコよくて、優しくて、努力家で……モテるに決まってんじゃん!

対して私は……。

生憎、優しさなんて持ち合わせていない。

努力なんて大嫌い。

できることと言えば、絵を描くことくらい……。

そういえば、彼との出会いも美術部だった。

         ♡♡♡

中学に入学した当時、彼は1年生の中で有名人だった。

あんな完璧人間、いるわけない。

どうせ無理して完璧を作っているだけだ――

と、私は最初、彼のことが苦手だった。

そして意外にも、彼は運動部ではなく、美術部に入部してきた。

その時の美術部は、1年の部員が私1人だけ。

雑用をすべて押しつけられていた私は、「これで解放される!」と思いつつも、何だかイラッとした。

私は絵しか取り柄のない女だ。

なのに、彼に絵のポジションまで取られてしまったら、やっていられない。

私には何にもなくなってしまう……。

それなら、雑用をやっている方がまだマシかも……!

どうにかして彼を辞めさせないと……!

「美術部に入るなんて、意外だね?」

とりあえず、探りを入れるために話しかけてみた。

「10人目」

「は?」

「それ、言われたの10人目!」

……なんだ、こいつ?((ʘὢʘ))

「あっそ、」


「てかさ、絵、描く気あんの?」

あ、つい辛口になっちゃった。
まあいいや、どうせ辞めてもらうんだし。

今のうちに嫌われとこ。

「すいませんでした……!!!」

すると意外にも、弱々しい返事が返ってきた。

そして彼は、1枚の紙を私に見せてきた。

その紙には、お世辞にも上手とは言えない、
謎の猫(?)の絵が描かれていた。

「っ……笑笑、あははは!」

「いーよ……! 笑われたって!」

なんか、意外な一面……。

「俺ってさ、顔がいいじゃん?」

急に自慢始まった?(笑)

何こいつ?

「で、運動は球技以外なら得意」

「はぁ?」

「新入生テストは死ぬほど頑張ったんだよね。そしたら『ハイスペ男子だ〜』って周囲が盛り上がっちゃって、勘違いされたままでさ……」

なるほど、なんとなく事情が分かった。

こいつは「できること」だけを周囲に見られて、今さら「できない」と言い出しにくくな
ってしまったのだ。

それで仕方なく、ボロが出なさそうな美術部を選んだらしい。

「てか!美術部入っても絵描かないと変だし、描いても下手ってバレるし...」

「正直なんも考えてなかったです...笑笑」

「この学校部活変更面倒いし。」

「なーんだ……」

「ちょっとおバカで、見栄っ張りなだけか」

その瞬間、私は彼のことを人間臭くて『好きだな』と思った。

「そっちだって、あんま変わんないだろ!?」

「私は出来ないことは『できない』って周りにちゃんと言ってるもん」

「ぐぬ……」

         ♡♡♡

そこから、私たちは仲良く(?)なっていった。

自分の中でも、『周りの女の子たちよりは、距離の近い存在。ちょっと特別な女の子』って、勝手に思っていたから。

「……つらいな」

「こんなことになるなら、もっと早くアピールすれば良かった……」

「てか、あいつと私じゃ、釣り合うわけないし」

って、ダメだダメだ!

ネガティブになると、余計に沈んでいくだけ。

私は悲しんで終わるだけのシンデレラじゃない。

都合よく助けてくれる王子様だって、どこにもいない。

だから、私は強く、賢く生きるって決めてたじゃん!

「危ない危ない、しっかりしろ私」

「さ、帰って絵でも描いて寝よ~っと」

あ。……筆、教室に忘れた。

「取りに行くか……」
 
        ♡♡♡

これが、この恋の最大の進展になるとは。

その時の私は、知る由もなかったのです。