――前上司と現上司の二人が兄弟だった。
黒猫ミオを抱っこした美桜は、恭司の背中を追い掛けるようにして後を追っていた。
外はどんどん冷え込んでいく。美桜はぶるりと体を震わせた。
こんな寒い時だからこそ、恭司のそばにいきたいけれど、今はあまり近づけない雰囲気だ。
どんどん先を行く彼に置いて行かれないように必死である。
しばらく無言のまま早歩きしていたら、黒猫ミオが「にゃあ」と一声鳴いた。
「ミオちゃん」
ミオが美桜に鼻を擦り寄せてくる。
なんだか勇気をもらえたみたいで、ふわふわの身体をぎゅっと抱きしめながら、前を歩く恭司に声をかけた。
「恭司さん」
すると、肩をピクリと震わせた恭司が、少しだけ歩みを止めた。
「新宮部長と兄弟だったんですね。名字が違うし、顔も似ていないから、気付きませんでした」
美桜の問いかけに対して、恭司がポツリと呟いた。
「俺が母方の名字を名乗っているし、母親が違うからな」
「御影はお母様のご苗字だって仰っていましたものね」
だがしかし、それ以上は返事がない。
新宮部長とは疎遠になっていたと話していたし、色々と思うとところもあるのかもしれない。
また恭司が歩を進めはじめた。
美桜はまた後を追う。
再びどちらも何も話さずにいたが、恭司がポツポツと口にしはじめる。
「順一のせいで髪切ったとか……なんなんだよ……」
「恭司さん……?」
恭司がこちらを見てくれない。
やはりというべきか、なんだか様子がおかしいので、美桜は少しだけ狼狽えてしまった。
黒猫ミオも心配そうに「にゃあ」と泣いている。
しばらく経った頃、恭司ががこちらを振り返らないまま尋ねてくる。
「あいつとどういう関係だったんだ?」
「え?」
「順一だ」
どことなく恭司の声音には怒りのようなものが滲んでいた。
どう答えたら良いか戸惑ってしまうけれど、嘘を吐いても意味はないだろう。
「……前の会社の部長さんです」
「じゃあなんで、順一兄ちゃんなんだよ」
険のある声が怖くて、美桜は猫のようにびくりと体を震わせた。
「父が新宮グループの社員だったので、小さい頃に会社のイベントなんかについていってたんです。その時に出会って、一緒に遊んだりしたことがあったんです。しばらく会っていませんでしたが、就職した時に再会したんです」
恭司がポツリと呟く。
「……昔、俺たちが飼ってた黒猫が可愛い女の子に生まれ変わってきたって言ってたな」
「……?」
強い風が吹いてきたせいで、恭司の言葉が聞き取づらかった。
「あいつが、またメールするって言ってたのは何なんだよ」
「最近だと、メールでご飯に誘われたことがあって……」


