「あいつって、顔をメディアに露出しないからさ。すごい不細工だって噂もあるんだけど、実際にあいつの顔を見て、すごく驚かれるわけなんだな。すごく恵まれた顔立ちだけど、顔出しするのが嫌いなんだ」
どうしてだか、恭司の話題なのに難波副社長が誇らしげだった。
美桜はおずおずと尋ねる。恭司以外の男性と二人きりで話すのは緊張する。
「御影社長と難波副社長は仲が良いんですね」
「ああ、そうなんだ」
「そのう、御影社長はどうしてメディアへの露出を避けていらっしゃるんですか?」
美桜は尋ねつつも、なんとなく答えは分かってしまっていた。
「――顔で仕事を獲っているって思われるのが不快なんだと」
難波の答えを聞いて、美桜はキョトンとした。
「そうなんですね。御影社長は真面目な人だって分かりました」
美桜はなんだか嬉しくなって微笑んだ。
「そう言われれば、どうして私は呼ばれたんでしょうか? 難波副社長はご存じですか?」
難波が困ったように返した。
「ああ、社長室に連日呼んですまない。どうやら確認したいことがあるらしくてな」
「確認したいこと、ですか?」
恭司はある意味で――この会社の中では誰よりも美桜のことを知り尽くしていると言っても過言ではない。
いったい何を確認したいというのだろうか?
(あ! まさか連絡先の確認?)
一瞬だけそんなことを思ったが、朝から恭司は難波に公私混同するなと話していたし、そんな私用で一般社員である美桜を、わざわざ呼んだりするような人物ではないはずだ。
だとしたら、本当になんだというのか?
社長室の扉の前に辿りついた。
「おい、恭司、入るぞ」
そうして、難波副社長が扉を開く。
先日は窓辺に立っていたはずだが、今日は違った。
「おい、恭司、どこに行った? おい! お前が呼んだんだろうが?」
その時。
部屋の端から声が聞こえた。
恭司だ。
「就業時間内に私情を挟んだ内容の電話は避けていただきたい。客人が来た。失礼する」
ものすごく冷ややかな声だ。
(誰からの電話だったんだろう?)


