冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい



『なあ、あんた、俺を泣かした責任とってくれよ』

 美青年はいったい何を言っているのだろうか?
 美桜はさっぱり理解が出来ずに戸惑いが強くなる。そのまま目をパチパチさせていると、美青年が続けざまに語り掛けてくる。

「聞こえなかったのか? 俺を泣かせた責任をとってくれって言ったんだよ?」

「え? ええっと? 私が泣かせたわけではないですよね?」

「へえ、責任から逃れようとしているのか?」

 美青年が仄暗い(ほのぐらい)笑みを浮かべてくる。

「せっ、責任も何も……! だって貴方が勝手に泣いていたんですよね!?」

 美桜は少々パニックを起こした。
 まるで獰猛(どうもう)な獣に追い詰められた小動物にでもなった気分だ。
 振り払いたくても、相手の手の力が強すぎる。

(同じ日本人だからって油断した? やっぱり怪しい詐欺師のお兄さんだったの?)

 ――普段と違う行いをしてはいけない。

 自分への戒めとして、この言葉を胸にこれからは生きて行こう。
 自分の過去の行動を後悔しつつ、この場をどうにか凌がないといけないので、美桜は必死に弁明をした。 

「ええっと、泣かせていませんし、それに、怪しい宝石の販売はご遠慮したいです!」

「怪しい宝石の販売? 俺がか?」

「そうです」

「えらく想像たくましいな。まあ、確かに物を売る仕事をしているが、そういう類のものは取り扱ってはいないな」

 どうやら美青年は商売に従事している人物らしい。それにしたって強引な客引きである。
 少しだけ相手の手の力が緩んだ隙に、美桜は子猫よろしく美青年の手からすり抜けた。ホテルの場所に向かって、川沿いを足早に歩を進める。

「おいおい、待ってくれよ。気まぐれだな」

「怪しい人からは距離をとりなさいと両親から教えられてきましたので」

 すると、美青年がこちらを揶揄(からか)ってきながら、後を追い掛けてきた。
 相手の歩幅が大きいので、すぐに追いつかれてしまう。

「両親の言うことを真面目に聞いて生きてきたタイプみたいだな」

 図星を指されてしまって、少々気まずい気持ちになりながら、美桜は前を歩む。

「……その通りですが、何か?」

「だったら、怪しい男に自分の情報を教えるのは迂闊(うかつ)だな。そんなんじゃ、怪しいやつらにクスリ飲まされるなり、売られたりするぞ。ただでさえ日本人女性ってのは、おかしな趣味の奴らに高値で売れるのに。あんたは特に小さいのが好きなやつらに好かれるぜ」

 美桜は心の中でむむっと唸った。

(せっかく質問されたから、ちゃんと返したのに。返事が意地悪すぎる)

 少々心がささくれ立った。