冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


 翌日、迎えた日曜日の昼下がり。
 ベッドの上で、美桜は頬を膨らませて怒っていた。
 身体にシーツを巻き付けたまましゃがみ込むと、まるで警戒した猫のようだ。
 そうして、目の前で胡坐をかいている恭司とは、にらみ合いっこを続けていた。

(これ以上はダメ、絶対!)

 金曜の夜から日曜日の昼にかけて、黒猫ミオが眠っている間、多少ご飯やお風呂の時間はありはしたものの……。

(恭司さんがずっと私のことを離してくれない、これ以上は体を好きにさせたらダメ!)

 さながら、今の美桜の様子は、毛を逆なでながら敵を威嚇する猫のようだ。
 しばらく見つめ合っていた(睨み合っていた?)二人だったが、根負けしたかのように、恭司が黒髪をかきあげながら、ふうっと溜息を吐いた。

「しっぽを巻き付けた猫みたいだな」

「悪い人間を警戒しているんです」

「はあ? 悪い人間って誰のことだよ?」

 恭司がじっと美桜のことを見てきた。
 彼女は頬を膨らませたまま、ふいっと視線をそらす。

「ご自身の胸に聞いてみてください」

「可愛い飼い猫にすっかり嫌われたみたいだな」

「……飼い猫にも休息は必要だと思いませんか?」

 恭司が呆れたように告げた。

「あんた、体力ないな」

「……恭司さんが、体力おばけなんです!」

 美桜はますます頬を膨らませて抗議した。

「体力おばけ? 運動神経なんざなくて良いから、体力はつけておけよ」

「どうしてですか?」

 すると、恭司が真顔で美桜のことを見つめてきていた。

「昼夜問わずに大変になるからだ」

「昼夜問わずに?」

「そうだ。体力勝負らしい」

 恭司がやけに真剣な表情を浮かべている。

(何が大変になるのか、イマイチ話題の本題が分からないかも?)

 とりあえず、美桜は思ったことを素直に伝えた。

「この数日の恭司さんの相手以上に大変なことはない気がしています」

「ん? 俺は別に騒々しくはないだろう? どっちかというと、あんたの鳴き声の方がずっと騒々しかったはずだ。発情しっぱなしの猫みたいにな」

「……っ」

 美桜は羞恥に駆られ、シーツをぎゅっと握りしめた。
 恭司が淡々と告げてくる。

「まあ、あんたぐらいの可愛い泣き声なら、俺としては悪くない気もするがな」

 それにしたって、彼が何の話題をしているのか?
 少々話の本筋を掴めずにいたのだが……。

(泣き声? 騒々しい?)

 美桜はピンときた。

(分かった、ミオちゃんに子どもができた時の話だ!)

 昨日、黒猫ミオとたくさんの子どものたちの未来について想像しあったことを思い出した。
 美桜は先ほどまで恭司を警戒していたこともすっかり忘れて、天真爛漫な笑顔を浮かべた。

「恭司さんも積極的になってくださったんですね?」

 すると。
 恭司の目の下が心なしか赤くなる。

「ん? ああ、相変わらずストレートな言い方だな。善処するって言っただろう? だから、ほら、そんなに警戒するなよ。俺も悪かったって。あんたの体力がそこまでないなんて思ってなかったんだよ」

「もう上に乗ってこないですか?」

「……個人的にはまだ物足りないが、あんたがそこまで言うなら、今日はやめておいてやるよ」

 恭司が美桜の頬に手を添えてくると、優しい手つきで撫でてくる。
 単純かもしれないけれど――恭司のことを信じようと美桜は少しだけ警戒を解くことにした。

「ああ、そういやあ、昼飯を食べてないからか、腹が減ったな」

 彼の言葉に呼応するかのように。
 ぐ~~。

「……っ」

 美桜のお腹が鳴ってしまった。
 それを聞いた恭司がくつくつと笑いはじめる。
 彼が笑うせいでますます恥ずかしくなってしまった。

「は……あんた、ドイツで過ごした時と変わらないな。色々と素直だ」

「……褒められてるのかどうかが分かりません」

「褒めてるに決まっているだろう? ああ、ほら、キッチンに何かなかったか探してきてやるから。確か林檎があった気がする」

「林檎……!」

 美桜の心がぱあっと明るくなった。