(雨でそのまま恭司さんのマンションに泊まったんだった……!)
彼の腕の中から逃れようとするものの、ぎゅうぎゅうにきつく抱きしめられていて、身動きが取れない。
このままだと筋肉に潰されて圧死しそうな勢いだ。
もぞもぞ動いていたら、なんとかかんとか抜けだすことに成功した。
「ふう、良かった」
そうして、ほっとしたのも束の間、お互い裸のままだったことを思い出してハッとする。
美桜は急いでシーツを上半身に巻き付けた。
「ん……?」
恭司の声が聞こえてきたので、美桜の心臓がドキンと跳ねた。
どうやらまだ眠っているようだ。
寝返りを打つ彼の横顔を黙って眺める。
(結局、恭司さんを説得できずにまた関係を持ってしまった)
自分の意思の弱さにシュンとなってしまう。
先に着替えでもしようかと思ってベッドから出ようとしたのだが……。
――『逃げるな』
昨日の恭司の様子が脳裏に浮かぶ。
少しだけ鬼気迫る様子だった。
(逃げませんって伝えたから、逃げないようにしないと)
ひとまず彼の横顔を眺めて過ごすことにした。
そんなに時間がかからない内に、恭司が瞼を持ち上げる。
「おはようございます」
「ああ、もう朝か……」
恭司が気だるげな様子で身体を起こした。
そうして、サラリとした黒髪をかき上げると、大きく欠伸をした。
あまりにも美形なので、そんな姿も様になっている。
「今日もよく寝たな」
そうして、寝ぼけ眼でこちらを見てきた。
ドキン。
朝も早くから、こんな美貌の持ち主に見つめられるなんて、ドキドキしすぎて心臓に良くない。
ひとまず挨拶を返すことにした。
「……おはようございます」
「ああ、おはよう。今日はちゃんと逃げずにいたみたいだな?」
恭司からやや挑発的な言い回しをされてしまい、美桜は頬を膨らませながら抗議した。
「約束はちゃんと守るんですよ」
「……ああ、なるほど。そういやあ、前の時は約束してなかったもんな」


