冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


 ――シンとなった。
 しばらく恭司からの反応がない。

(結婚がどうとか重たいことを話す女だと思われたかも?)

 だけど、これで恭司が自分と身体の関係を持つのを踏みとどまってくれたのなら……。

(良かったと思わなきゃ)

 身体が疼いて仕方がないけれど、ここで終わりにするのが最善のはずだ。
 だって――住む世界が違い過ぎるのだから。
 とはいえ……。
 あまりにも恭司からの返事がないので心配になってきた。

「社長、あの……?」

 おそるおそる背後を振り返ろうとしたら、恭司が先に話しかけてくる。

「だから、俺に抱かれるのをダメだって言っていたのか?」

「……はい、そうなんです」

「だったら――何も問題はない。それよりも、名前だ」

「え?」

 恭司はそれだけ言うと、美桜のことをぎゅっと抱きしめてきた。

「名前だよ、名前」

 ――どうにも恭司と話がかみ合っていない気がする。

「名前? それよりも、お風呂から上がって……きゃっ……」

 彼女の首筋に彼が顔を埋めてくる。

「俺の名前、もう忘れたのか? 薄情な女だな」

 ドクン。
 先ほどの答えではないけれど……。
 あまりにも彼が名前名前と言ってくるので、ちゃんと答えることにした。

「名前、ちゃんと知っています。御影社長だって」

「それよりも私の話をちゃんと聞いてくださいましたか?」

「聞いているに決まっているだろう?」

 恭司はそう言い張ってくるが……。

(だったら、どうして私のことを抱きしめてくるの……? めいいっぱい、恭司さんからのお誘いを断ったつもりなのに……)

 あげくの果てに――まるで猫が求愛を示してくるように、彼から擦り寄られると――胸がドキドキして落ち着かなくなってくる。
 
「お前の方こそ俺の話を聞いていたのか?」

「もちろんです」

「だったら、ほら。あんたがずっと呼んでいるのは名字だ。俺の名前を呼んでくれよ」

 恭司が美桜の耳元で囁いてくる。

「名前……恭司、さん……?」

 彼がまた彼女の肌に口づける。

「恭司さん、待ってください。私はさっき言った通りで……だから、これ以上はダメで……あ……」

「ダメじゃない、もう一つの問題も、全く問題にならない。だからお前は何も心配しなくて良い」

 恭司は美桜に口づけ続けた。

(結局、うまく断れなかった)

 ――恭司を説得することが出来なかった。
 けれども、後悔や残念な気持ちよりも――。
 また彼に求められたことが嬉しくて、喜んでしまっている自分がいる。
 美桜の身体を恭司が抱きしめてくる。
 そうして、熱を帯びた声音で告げられる。

「まだだ。まだ足りない。もっとあんたが欲しい」

 ――彼に愛されているだとか、そんな高慢なことは思えないけれど……。
 
(だけど、こんな風に求めてこられている間は、恭司さんは私のことだけを考えてくれている?)

 恭司の胸板に美桜はそっと頭を預けた。

「はい」