冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

 湯船の中、美桜は後ろから恭司に抱きしめられていた。

「ここから先は、俺のことだけ考えていろ」

「御影社長……っ……」

 彼が後ろから彼女の頬に頬ずりしてくる。
 少しだけ顔を横に向けた彼女の鼻先に、彼の鼻先が触れる。
 擦り寄られると、まるで猫同士が友愛を示しているようだ。

「あ……」

 彼女の耳朶に彼の唇が触れてくると、色香を孕んだ声が鼓膜を震わせてくる。
 首筋に彼の吐息を感じて、彼女の体がビクンと跳ね上がった。
 そんな彼女の様子を見て、彼がクスリと笑んだ。

「面白い飼い猫がもう一匹増えたな」

「飼い猫……?」

 美桜の背後で恭司が口の端をゆるく吊り上げるのが伝わってきた。

「可愛い猫がやっとまた俺の元に戻ってきたんだ。もう俺から逃げる気が失せるぐらいに奉仕してやるか」

「え……?」

 彼女の項に彼が口づけを落としはじめる。
 濡れた肌を彼の唇で柔らかく何度も吸われる。

「社長、……まだ問題は残ってるんです」

「なんだよ?」

 ピタリ。
 彼の動きが止まった。
 恭司の声音がやや不機嫌そうだ。
 そんな相手に対して何かを告げるのは、すごく緊張してしまう。
 けれども……。
 
(ちゃんと言っておかないと、このままなし崩しで関係を持っても、お互いに良くない気がするもの)

 美桜は勇気を出して告げてみることにした。
 相手に背中を向けたままなら、少しだけ緊張も緩和できる気がする。

「私は結婚して幸せな家庭を築くのが夢だったんです。できれば初めての男性と」

「ん?」

 背後にいる恭司が首を傾げている雰囲気が伝わってきた。

「ああ、それなら、処女を奪った責任をとれとか、そういう類の話なのか? だったら……」

「違います。もう大人なので、自分の身体の責任は自分がとります」

 美桜はキッパリと告げた。
 恭司が眉を顰めたのが分かる。

「それなら、何なんだよ?」

「貴方とあんなことがあったので、もう誰とも結婚しない覚悟を決めています」

「無理してそんな覚悟を決めなくてもだな」

「だけど……」

 恭司が何か言いたげだったが、美桜の言葉の続きを待ってくれていた。
 彼女は一度だけ深呼吸する。

「その……これ以上、こんな風に優しくされたり、何度も貴方に抱きしめられたら……」

 美桜は恥ずかしいので恭司の顔は見ないまま続けた。
 話しながら顔が火照っていくのを感じる。

「貴方から……離れられなくなりそうで……怖いんです」

 恭司が息を呑むのが伝わってくる。
 浴室で喋っているせいもあって、自分の声がよく響いてきた。
 自分の気持ちを伝えるのはすごく緊張する。
 だけど、ちゃんと言わないといけない。

「初めての相手だったのもあって、一緒にいるとドキドキして……これ以上ドキドキして離れられなくなってしまったら、貴方に迷惑をかけるんじゃないかって心配しているんです。だから、貴方と身体をこれ以上繋げるのはダメだって思っています」