冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


 とはいえ、このままだと単なる不審者でしかない。どう転んでも不審者扱いになるのであれば、少々言いづらいが、美桜は思っていることを伝えてみることにした。

「その……泣いていらっしゃるようなので、気になってしまいました」

 最初は相手の顔を見ながら話していたが、緊張して徐々に声が小さくなってしまった。真正面から誰かを見るのは怖くて、少しだけ俯いてしまう。

「ああ……気付いてなかったな」

 美青年は頬を乱雑に指で拭うと、自身の髪をざっとかきあげた。
 黒豹のような優雅な印象のある男性だったが、割と粗野な動作が目立つため、獰猛な野犬のような印象に一気に変わってしまった。

「そのう、何かあったんですか? 具合が悪いとか?」

 普段なら誰かに干渉しないのに、海外という場所が普段よりも自分を行動的にさせてきたのか、ついつい尋ねてしまった。
 美青年は斜め上へと視線を向けながら、少しだけ考え事をしている雰囲気だったが、あっさりとした調子で返事をしてくる。

「いいや、特別何もないはずだがな。自分でもどうして泣いていたのか分からない」

「え?」

 美桜はキョトンとして首を傾げてしまった。
 美青年に誤魔化している雰囲気はなく、本当に理由が自分でも分からないという表情だ。

(自分でもよく分からないうちに落ち込んでいる人なのかもしれない)

 日々のストレスが知らず知らずのうちに溜まってしまって、身体が勝手に反応してしまっている可能性だってある。
 なんとなく美青年のことを励ましたくて、美桜は勇気を振り絞って声をかけた。

「よく分からないけれど、勝手に涙が出てくること、私もあります」

「……? そうなのか? 変わっているな、あんた」

 美青年は気怠そうに首を傾げていた。
 なんだか少しだけ話がちぐはぐな感じもしたが、初対面だし致し方ないだろう。

「自殺志願者の方でしょうか? その、川に飛び込むぐらいなら、観光名所を巡って気分転換をしてはいかがですか!?」

 自分でも一体全体何を訴えかけているんだと思ったけれども、同じ日本出身の人が苦しんでいるのだとしたら心配で仕方がなかった。

「自殺志願者? 何の話だよ」

 美桜の発言を耳にして、美青年はキョトンとしていた。
 そんな反応を目にして、美桜もキョトンとしてしまう。