恭司に対して――。
(好き、なのかな……?)
誰とも付き合ったことがないので、よく分からないが、年上の男性に対しての憧れのような気持ちがある。
「興味なかったかもしれないが、あんた、そういうの気にしそうだしな。ほら、こっちだ」
恭司から隣の空き部屋と案内される。
彼が室内をランタンの灯りで照らした。
すると、床の中央に、ケージに入れられた黒猫の姿があった。
「みゃお!」
美桜を見て黒猫が一声鳴いた。
(あれ、この黒猫……?)
美桜はなんとなく既視感を覚える。
「こいつの世話を頼みたい。俺に懐いてはくれてるんだが、動物を飼ったことがなくてな。とりあえず、缶詰と水は置いてはいるんだが、俺もマンションに不在のことが多くて困ってたんだ」
「この子、どうしたんですか?」
「日本に帰国してから、あんたみたいに雨の日にずぶ濡れになったところを拾ったんだよ」
「猫、苦手って仰っていませんでしたっけ?」
苦手というか憧れているとは言っていた気もするが……。
「ほら、来いよ、ミオ」
恭司が黒猫を腕に抱き寄せた。
美桜は「ん?」と首を傾げた。
「ミオ?」
「こいつの名前だ」
彼が指しているのは――黒猫だった。
(そう言われれば、飼いネコと同じ名前だって言ってた気がする)
合点がいったのだが――。
(日本に帰国後にミオって名前をつけたの? たまたま?)
恭司が黒猫ミオのことを抱き寄せた。
優しい手つきで黒猫ミオのことを抱きしめる彼の姿を見ていたら、どうしてだか美桜までドキドキしてきた。
(自分のことじゃないって分かっているけれど、名前が同じだから、なんだか気恥ずかしい)
その時。
黒猫ミオが不機嫌そうな声を上げて、恭司に襲いかかっていた。


