冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


 そうして、彼が淡々と話し掛けてくる。

「《《気まぐれな猫》》の警戒心を解く必要があってな」

「気まぐれな猫、ですか?」

 美桜は顎に指を添えると首を傾げた。

「ああ、そうだ。あんたは確か猫に好かれる性質だったはずだ。世話もできるか?」

「ええっと、きょう――じゃなくて、御影社長よりは猫に好かれやすいとは思います。あとは、近所に住んでいたおばあちゃんの家が猫を飼っていたので世話は慣れています」

「だったらそれで良い」

「それで良いとは……?」

 恭司がサラリとした黒髪をかきあげる。
 先ほど水を浴びたせいもあって、彼のこめかみから頬にかけて雫が流れ落ちていく。
 モデルもかくやという所作と容姿に――ますますドキドキしてしまう。
 水も滴る良い男という言葉があるが、まさにその通りである。

「最近、猫を飼い始めたんだが、少々困り事があってな」

「猫? 困りごと?」

 そう言われたら、先程「気まぐれな猫」がどうとかボソボソ話していた気がする。

「それでだ、俺もあまり猫の世話は詳しくない。病気じゃないから動物病院には頼めない。よかったら、あんたに見てもらえたらと思ってな」

 恭司からの頼みごとを聞いて少々放心していた美桜だったが……これまで以上に、全身が一気に熱くなった。

「なんだ! 猫か! そういう理由があったんですね! それでしたら、ぜひお邪魔させてもらえたら」

 美桜はしどろもどろになった。

「……他にどんな理由を想像したんだよ?」

 恭司がイタズラを思いついた少年のような笑みを浮かべてくる。

「いえ、そんな、おかしな想像はしていなくって……」

「へえ、おかしな想像ねえ」

 彼はと言えば――口の端を吊り上げてニヤニヤしている。

(この人、絶対に分かってて言ってるよね……!?)

 美桜は揶揄われて少々悔しい気持ちになった。

「さて。少しだけ雨が止んだな」

「あ、本当だ」

 電気はまだ戻っていないが、小雨になっている。

(あ……)

 恭司が美桜の体から離れると――心なしか、いつも以上に寒さと寂しさを同時に感じた。
 その時。

「ほら、今の内に行くぞ」

 恭司が手を差し出してきたので、美桜は反射で手を取った。
 繋いだ手が熱くて仕方がない。

「はい」

 恭司に手を引かれながら、美桜は彼のマンションへと向かったのだった。