冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい



「俺のことをヤリ捨てた女なのに、意見がない女になってるなって言ったんだよ。日本だと大人びて見えたが、気のせいだったかな」

「ヤリ捨て? 誰が誰を?」

「お前が俺をだよ」

「え?」

 美桜の頭の上に疑問符がいくつか飛んだ。
 だがしばらくして、今度こそ意味がはっきりと伝わってきた。

「ち、違います!」

 美桜は顔を真っ赤にして慌てて抗議した。

「な、なんの話ですか!?」

 思わず周囲に人がいないかキョロキョロ確認してしまった。 

「ドイツの話だよ。そんなに時間が経ってないのに忘れてるとか、薄情な女だな」

「どちらかといえば、貴方が私をヤリ捨てたんじゃ……!?」

「はあ? お前の方こそ、人聞きの悪いことを言うなよ。そんなに女に困ってそうに見えるか?」

「それは見えませんが……そもそも人聞きが悪いことを言い出したのは、貴方の方ですよね……!?」

「俺は事実を述べているだけだ。俺が朝起きたら、忽然と姿を消していたのは、お前の方だろう?」

「それは……そうですが……」

 てっきり忘れられていると思ったのに、恭司から忘れられていると思いきやバッチリ覚えられていたではないか――。

(というよりも、恭司さんの中で私が恭司さんをヤリ捨てたことになっているの……?)

 何がどうなってそんなことになってしまったのか?

(私が逃げたから? だけど、女の人をよくホテルに連れ込んでるとかいう話で……?)

 恭司が淡々と告げてくる。

「大人しい女の方が実は派手に男と遊んでいるっていう説があるが、お前もそれかと……」

「違います! そんなことはありませんから!」

 美桜が慌てふためいていると、ちょうど一台車が通った。
 恭司が美桜の身体を抱き寄せる。
 水たまりが跳ねてバシャリとかかった。
 美桜にはほとんどかかっていないが……。

「あ、あの、恭司さん、びしょ濡れに……!」

 恭司の方が雨でずぶ濡れになってしまった――!

「ごめんなさい、私を庇ったせいで……!」

 すると。

「ああ、本当だ。あんたのことを庇ったせいで、濡れちまったな」

 恭司がややわざとらしい言いまわしをしてきた後、濡れた髪を美桜を抱いていない手でかき上げた。
 黒髪から雫が零れ落ちる。
 水も滴る良い男とは言うが、そんな姿も様になっている。
 それにしたって……。

(水たまりの水から庇われてから、ずっと抱きしめられたままなんだけど?)

 まったく相手が自分のことを離してくれない。
 逃げ出そうにも力が強い。
 美桜は恐る恐る尋ねた。

「ごめんなさい、もう車は通っていないので、よければ離していただけませんか?」

 だが、帰ってきた返事は……。

「ダメだ。離したら、また俺の前から逃げそうだからな」

 ドクン。

(恭司さんはどうしてそんなことを言うの……?)

 どうしようもなく期待で胸が膨らんでしまう。
 困惑したまま、美桜はなんとか恭司に告げる。

「……クリーニング代は出しますから」

「別に必要ない。そんなに高い金じゃあないだろうからな」

「ですが、お詫びをさせてください」

「だったら……」

 恭司の美桜を抱きしめてくる腕の力が強くなる。
 密着し合うと、彼に心臓の音が聴こえやしないか心配になってしまう。

「俺のマンションが、近くにあるんだ」

 そうして――彼の唇が彼女の耳元に寄せられた。

「ついてきてほしい。濡れた責任とってくれよ」