外に出ると大雨だ。
しかも暗い。
もう十二月だし、寒くて仕方がなかった。
「どうやらここら一帯、大規模な停電が起きてるみたいだな」
御影社長の言う通り、辺り一帯が真っ暗闇に包まれている。
(確かに普段だったら、もっと明るいものね)
そもそも、雨が酷すぎる。
「社長、外に出るのは良いのですが、傘はお持ちでしょうか?」
「いいや、俺が持ってるように見えるか?」
「持ってるか持ってないかは、社長の風貌だけでは分かりません」
「それもそうだな」
しばらく雨が止まないか様子を見ることにする。
しかしながら、停電からなかなか復旧しそうにもない。
大通りからは少しだけ離れているため、イマイチ状況が確認しづらいが、とにかく土砂降りで、少しでも道を歩こうものなら、びしょ濡れは免れない。
「暖房が効かない会社の中で待つか。だが、いつ電気が復旧するかは分からない。下手したら、朝までそのままかもしれない」
「そうですね」
美桜は眉根を寄せた。
(電車も止まってるなら、会社に泊まるしかない?)
近くにホテルがあるかもしれないが、そもそもこの暗さだ。そのホテルも停電している可能性が高い。だとすれば、会社が無難だろう。
ふと、恭司の顔を見る。
曇り空だが暗がりに視界が慣れてきたこともあって、恭司の顔がよく見えた。
ドクン。
(まさかまた二人きりになるなんて……)
せっかく意識しないようにしていたのに、こんなにも偶然が続いてしまうと、どうしようもなく意識してしまう。
(たくさんの会社を持っている恭司さんにとっては、私はただの社員なんだから、おかしな期待を抱いたらダメ)
とはいえ、自分にとっては初めての相手だったし、しかも手を繋いだりしてしまって、意識するなと言っても無理がある。
「それでお前はどうする? 会社に残るか? 俺は自宅マンションが近いから、雨の中、少しだけ走ろうと思っているが、お前も……か? どうだ?」
「……え?」
後半何と尋ねられたのか聞いてなかった。
「お前はどう思っているのか聞いているんだ」
「ええっと」
まさかの社長の顔に見惚れてしまって、話半分だったなんて、口が裂けても言えそうにない。
「先程社長が仰っていた案が良いんじゃないかと……」
「流されがちだな」
「え……?」
「自分で判断しろ。そうじゃないなら、わざわざ人件費を出して雇う価値がない。場の雰囲気に飲まれたまま動いていたら、取り返しがつかないことになるぞ」
続ける。
「口がうまいやつが悪どいこと考えてるなんて、この世の中ザラだからな」
恭司からぴしゃりと告げられてしまい、先ほどまで期待に満ちていたのに、一気に気落ちしてしまった。
(ドイツとは違って、全然優しくない……)
モテる男性は一度抱いた女性への関心は失くすというし、覚えられていない可能性が高く、そもそも一社員でしかないのだから、上司からの反応として当然と言われたら当然の反応だ。
美桜がシュンと項垂れていると……。
「それにしたって、俺のことをヤリ捨てた女のわりには意見がはっきりしないな」
思いがけない単語が聞こえた気がする。
美桜はパッと顔を見上げた。
「え? 今なんて?」


