冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

「ああ。梅田さんも驚いたよな?」

「ええ。従業員の顔は覚えておきたい社長さんなんでしょうか?」

「いや、そういうタイプでもない。むしろ覚えたがらない気がしている」

 課長がキッパリと告げてきた。

「ええっ……!?」

 ますます展開の意味が分からず、美桜の頭の中は「?」でいっぱいになっていった。

「理由が分からない。だが、あの人の命令には逆らったらダメだ。それがこの会社の絶対なんだ」

 課長がげんなりしているというか、ものすごく険しい表情を浮かべていた。
 先ほどの男性従業員たちの会話を思い出す。

(冷徹冷酷な男性なんだっけ……?)

 どうしてそんな人物にわざわざ名指しで呼ばれるのだろうか?
 課長が何やらぶつぶつ言い始めた。

「それにしたって、どうして、この子だけ社長室に呼ばれるんだ? 中途だからか? まあ、良いか……だからさ、挨拶にぜひ向かってほしい」

「は、はい、分かりました」

 何が「だからさ」なのかはサッパリ分からなかったけれど、美桜はコクコクと頷くと社長室へと向かうことになった。

(中途入社だからなのかな?)

 それ以外に呼び出しされる理由が分からない。
 ドクン。

(もしも……)

 もしもだけれど、中途入社の理由を尋ねられたりしたんだとしたら……?

(恭司さんは、前の会社で頑張ったなって言ってくれたけれど……)

 世間からどう見られるかは分からない。

(俺が海外にいる間に人事部長が勝手におかしな女を採用した! ……って怒ってたりしたら、どうしよう……)

 社長室に近づくに連れて不安が募っていく。
 ドクンドクンドクン。

(どうしよう……)

 緊張していたら、社長室の扉の前に辿り着いてしまった。
 全身が脈打っているみたいで、指先にうまく力が入らなくて、息をするのもやっとだ。

(どうしよう、どうしよう、どうしたら……)

 ドアノブに手をかけたまま、室内に入るのを躊躇していたけれど……。

『一人でよく頑張ったな』

 心の中の恭司が美桜のことを励ましてくれた。

(大丈夫、ちゃんと私のことを分かってくれた人がいたもの)

 勝手に悩み事を想像して前に進まないのは絶対に良くない。
 美桜は深呼吸をして、背筋を伸ばすと、扉をノックをした。

「失礼します」

 勢い余って、うっかり相手からの返事がないまま入室してしまった。

(まずい、緊張しすぎて最初から失敗しちゃった)

 社長はデスクには座っていなかった。
 視線を向ければ、窓辺に長身の男性が立っていて、眼下に広がるビル街を眺めていた。
 ドクン。
 美桜はその光景に既視感を覚えた。

(あ……)

 うっかり部屋に先んじて入ってしまったことを忘れて、社長の横顔へと視線を凝らす。
 逆光でしっかり顔が見れない。
 けれども、相手がこちらをゆっくりと振り返ってきた。
 美桜は瞠目する。

「ああ、来たのか」