冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい





 新しい職場へと向かう。出社して数日が経つのだが、以前の職場よりも従業員たちが気さくな雰囲気で、指導もすごく丁寧で分かりやすいし、不必要に怒鳴られたりすることはなく、建設的な意見が飛び交う場所だった。
 何よりも――皆穏やかで優しかった。

(アットホームな職場というべきかな? 私でもなんとかやっていけそう)

 昼過ぎ。
 給湯式でお茶を汲んでいたら、近くの自販機の前で従業員たちの会話が、たまたま耳に聞こえてくる。美桜と同年代の男性職員たちのようだ。

「そういやあ、社長が帰ってきたらしいよ」

「ああ、御影社長がか? 今日?」

「そうそう、今日だよ、今日。さっそく社長室に専務が呼ばれてたんだよ」

「へえ。帰ってくるなり、部下に命令か。相変わらず、仕事の鬼だな」

 どうやら社長の話のようだ。

(ええっと、御影社長……若い社長さんだったかな? 私よりも何歳か年上だったような? 顔写真も載せたがらないらしいし、どんな人なのか全然想像もつかないな)

 どうやら海外の大学を卒業しているらしく、卒後に副社長と共に御影マニュファクチュアリングを立ち上げ、若くしてグループ会社にまで発展させたかなりのやり手だ。

(大学時代の海外の友人たちと輸出入のやり取りをして、それで業績を伸ばしたんだとか)

 特に出身大学では、医学と工学が発展していたこともあり、関連した仲間が多かったようだ。医療機器の製造・輸出入だったり、オンライン診療サービスのためのデータベースを作成したなどの功績が認められて、雪だるま式に大きな会社になったのだという。

(私と同い年の頃には起業して成功してたとか、雲の上の人だなあ)

 男性職員たちが話を続ける。

「若くしてやり手だけど、人間味がないんだよな」

「本当だよ。冷たすぎるし、あんな無茶な働きぶりは真似できないよな」

「まあ、だからこそ、どこかに勤めるんじゃなくて、起業したんだろうしな」

「違いないな」

 男性社員たちの会話を耳にしながら、美桜は首を傾げた。

(すごく怖い男性なんだろうな。怖い人が社長だから、社員の皆もまとまっているのかな?)

 お茶を汲み終えると、部屋へと戻る。
 すると、課長がソワソワした調子で室内をうろうろしていた。

「ああ、梅田さん。ちょうど良かった。君に用事だ」

「はい、いかがしましたか?」

 美桜がデスクの上にお茶を置くと、課長が用件を告げてきた。

「実は社長が帰ってきたんだ」

 先ほど男性職員たちが会話をしていたので、フレッシュな話題だった。

「海外から帰ってこられたんですよね?」

「そうそう。話が早いな。ヨーロッパの方で過ごしていてね。あっちでも起業してるからさ」

 帰国したばかりの社長と自分の用事との関連性が見いだせない。

「それで……君に今から社長室に挨拶に向かってほしいんだ」

「え? 私が? 社長室に直接ですか?」

 思いがけない展開に、美桜の口から素っ頓狂な声が漏れ出た。
 前の会社だったら、従業員が社長室に呼ばれるなんてこと、滅多になかった。……というよりも絶対になかった。

(何かの行事の時に声をかけられるぐらいだったと思うんだけど……)

 会社が違えば文化も違うというところだろうか?