数日後。
ドイツからの帰国後、あれだけ鬱屈していた気持ちもすっかり晴れ渡り、美桜はすっかり元気を取り戻していた。自宅マンションに戻ると、会社からの内定通知も届いており、ますます気持ちは上向いて行った。
中途退職をしたため、あまり心証がよくないだろうかと心配していたのだが、まだ若いということもあったからか、割かしトントン拍子で就職先が決定したようだ。
(もっと大変かと思ったけれど、こんなに早く仕事が決まるなんて嬉しい!)
あの旅行以来、付き物が落ちたというべきか、なんだか身体が羽根のように軽かった。
(恭司さんのおかげかな?)
もう二度と会うことはないだろう。
女性遊びが激しい男性だったのにはショックを隠せなかったが、それ以上に良い思い出をくれた相手として、美桜の心の中には残った。
海外での良い思い出がこれまでの嫌な記憶を上書きしてくれたようだ。
(あんなにカッコ良い男性とは二度と会う機会もないだろうし、海外旅行の良い思い出って感じかな)
少しだけ違う自分に生まれ変われた気がした。
親には内緒で――大人の階段を上れた気もする。
ふと、恭司に貰った黒猫のオーナメントへと視線を移す。
(これからも良い思い出として残しておこう)
新しい職場でも頑張れそうだ。
「まさかの御影ホールディングスの本社の総務部に採用されちゃった。評判も良いみたいだし、頑張らなきゃな」
情報システムの構築や、生活関連や医療機器類の開発から製造・販売、輸出入までを手掛ける比較的新しい会社だ。
今度こそ、おかしな評判とは無縁の平和な仕事場であるようにと、美桜は心の中で気合を入れたのだった。


