冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい



 恭司は瞠目した。
 少しだけ俯き加減の黒髪の女性。幼い印象の残る顔立ち。恭司が知る姿よりも長髪だが、間違いない。
 しばらく呆然としていた恭司だったが、くつくつと笑い始めた。
 難波が奇妙なものを見るような視線を恭司に向けてきていた。

「神なんざ信じてないが、今回はどうやら俺に味方してくれたみたいだな」

 恭司は衣服を整えながら、難波に向かって声をかける。

「難波、こいつは採用だ。人事に連絡しておけ」

「ん? 結局採用にするのかよ? 危ない芽は摘むんじゃあなかったのか?」

「気が変わった」

「気が変わったって……一瞬だけ、昔の不真面目な恭司に戻ったな」

「どこがだよ?」

「最近は辞めたが、賭け事が好きだっただろう?」

「賭けるよりも、自分で動いて勝算上げる方が効率が良いって分かったからな」

「まあ、いい。社長のお前がそう言うんなら、採用だって連絡しといてやるよ」

 難波がスーツのポケットの中からスマホを取り出すと、日本本社へと電話連絡をはじめた。
 恭司は窓からハイデルベルクの街を眺める。
 昨晩彼女に説明したように――青空の下、オレンジ色の屋根の建物が立ち並んでおり、まるで夢の世界のようだ。
 今頃、この街のどこかで猫と戯れながら、旅を満喫しているのだろうか?

「それにしたって、MIOか。やっぱり猫みたいな女だな」

 恭司は口の端をゆるりと吊り上げると黒髪をかきあげた。

「欲しいものは全部自分の力で手に入れてきたんだ。俺から逃げられると思っているなんて、詰めの甘い猫だな」

 ――獰猛な獣の罠にかかりかけているなんて、美桜本人には知る由もなかったのだった。